太っ腹 ページ28
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まさか、こんな所で会うなんて。
唐突に訪れた2人きりの時間に、嬉しいような、何となく緊張するような。
ヒロとの話で「和也に会いたい」って、恋しくて堪らない夜を過ごしたからかな。
週末に会ったばかりなのに、どこか照れくさいような気恥ずかしさもあって。
「…11階のロケ、和也たちだったんだね」
「んー」
「びっくりしちゃった(笑)。全然気付かなかったよ」
「ふーん」
背中をエレベーターの壁に預けたままで下を向き、気のない返事。
「…あ、実はね、私もちょっと事情があってラウンジに――…」
「居たの、へー」
……。
何だか取りつく島もない。
疲れているというか…不機嫌というか…。
どうしよう…
ちょうどいいタイミングだからマサトの話をしておこうと思ったんだけど、そんな雰囲気じゃないかも。
そもそも、普段の用意周到な和也が駐車場に忘れ物をするなんてこと自体おかしい。
そう言えば、日曜日のオフの後はスケジュールが一気にタイトになる、って話してたもの。
きっとすごく疲れているんだ。
大丈夫かな…。
心配になってきて、そっと覗き込むと。
視線を逸らした和也が、はーーっ…と大きな溜息をついて天井を見上げ…
両手をポケットに入れたまま再び下を向き、何が面白いのか、くくく…と肩を揺らし始めた。
「あの…和也…？」
「…や、別に。
ただね。オレの了見って、やっぱめちゃめちゃ狭かったんだなーって実感しただけ(笑)」
「了見？？」
「んなことより…続き」
「…え？」
じろりと睨まれた。
「は？何か言いかけてたでしょーよ！」
「ああ…うん。実は、私もマサトと一緒にさっきのラウンジに居て…」
「おっせーわ！」
お言葉に甘えて話を続けた途端、不機嫌全開でツッコミが入った。
「ご、ごめんなさい」
「バカだねー悪くもないのに謝ってんじゃないよ！」
「うっ…」
「そーいや、イケメン君、『Aから奢ってもらって嬉しかった』っつってたよねー」
「！」
…あそこのランチ高っかいんだなーと、大袈裟に顔を顰めてイヤそうに笑われて。
「あ、あれは！違うの、そういうことじゃなくて！！あ、確かに奢ったのは本当だけど…でも、それにもちゃんと理由が…」
「へー、やっぱAの奢りだったワケね。イケメン君と豪華なランチ。A太っ腹だなー(笑)」
「だから、それは――…」
何も説明できていないというのに、チンと乾いた音が響いて、私の言葉を遮った。
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作者名：kico
| 作成日時：2017年9月27日 15時
