扉 ページ27
.
『あいつによろしく』…か。
…つまりは、“ヒロによろしく”ってことだよね。
確かに弟のヒロは、昔から自分が正しいと思ったことには良くも悪くも一直線な面がある。
子供の頃には周りが誰も予想もしてないような思い切った行動をして、私も驚かされたことが何度かあったっけ。
とにかく、家に帰ったらヒロに電話してみよう。
どうして勝手にそんな余計なことをしたのか、問い詰めてやらなきゃ…！
考えている間にチン、と音がして、エレベーターがスタジオ階の4階に着いた。
前方の操作パネル側のスタッフさんから降りてゆき、扉の近くに立っていた私は、自然とパネル前へと入れ替わる。
前を向き、皆さんが降り終わるまで扉が閉まらないように“開”ボタンを押して、皆さんが降りていくのを見送っていると。
最後に降りた芸人さんが一旦廊下に出て、それから「あれれ？」と大きな声で私のいるエレベーターの方を振り返った。
「4階に着きましたよ？降りられへんのですか？」
…あ、いいえ、大丈夫です、私は1階ですので…と。
私が口を開く前に、後ろから。
「―――あー、ごめん。
ちょっと忘れ物があってさ、地下駐車場まで取りに行って来ますんで。
悪いんだけど、うちのマネージャーにもそう言っといてよ」
「！？」
――――ええええーっ！！？？
驚いてバッと振り返ると…。
案の定、和也が視線を芸人さんに合わせたまま、エレベーターの後ろの壁に背中を預け、両手をポケットの中に入れて気怠そうに立っている。
うそ…
和也も同じエレベーターだったんだ。
「そーですか。そんじゃ、先にDスタ行ってますね」
「うん、よろしくー」
「……」
営業スマイルで芸人さんに手を振っている様子を振り返ったまま呆然と見ていると、そこでやっと目が合った。
私を見ても表情を変えることなく、和也が一言。
「扉」
「…え？」
「だからー、扉。
そのまんまだと動かないんで。閉めてもらっていいっすか？」
「あ…」
固まってしまって、ずっと“開”ボタンを押したままだったことに、そう言われてやっと気付いた。
「す、すみません…///！」
慌てて手を離すと、扉はゆっくりと閉じてゆき…
「どーも。ついでにB2。押してもらえます？」
「は、はい…」
速度の遅い旧式エレベーターは、私たち2人を載せて、ようやく下へと動き出した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2738人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kico
| 作成日時：2017年9月27日 15時
