ペラッペラに薄いんじゃないの？ ページ19
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喋り始めた谷山は止まらない。
「いやしかし、高校時代の同級生かあ。昔付き合っていたけど別れてまた就職してから偶然ここで再会したんだって？ニッシーずっと彼女のこと忘れられなかったって聞いたんだけど、ね、それ本当？」
「まあ、そんなとこっすね。俺、諦め悪い方なんで(笑)」
「いやあ、すごいよ。忘れられなかった元カノと再会して、それからずっとその子一筋にアプローチでしょ？簡単にできることじゃないよね。それって、つまりさあ――……」
相っ変わらず、よく喋るヤツ。
聞いてるだけで疲れるわ…(笑)。
谷山の相手はニッシーにお任せしてスタジオの入口を確認すると、ディレクターが大声で檄を飛ばしているところだった。
「おいバイト！！お前、こんなケーブルひとつ碌に巻けないの！？
わからないなら、先輩にケーブルの巻き方教えてくださいと自分から聞きに行け！！音声が揃えばすぐにロケ開始なんだぞ！！」
カメラの新しいバイトくんが、さっそく叱られてる。
まあね。
ある程度叱られて仕事を覚えていくのは、どこの業界もおんなじ。
ディレクターも、言い方なんだよな。悪い人じゃないのにね。
ま、今の話だと音声スタッフ待ちってとこか。
スタジオに戻ると、ニッシーはまだ谷山に捕まっていた。
「…ってことで、つまり結局はただの腐れ縁っすよ。
結婚してくれって言い続けて、やっと彼女に責任とってもらえたっす(笑)」
「へええ、結婚もニッシーの方が押したってこと？その若さで？やるなあ！でも、結婚したら自由には遊べなくなっちゃうじゃん。いいの、もう決めちゃって？ニッシー何歳？まだ25か26かそこらでしょ？まだまだ若いじゃん。その歳の頃は、俺いろんな女の子と遊びまくってたけど…」
「頃『も』でしょ(笑)。谷山さんの交友関係広いっすもん(笑)」
「あ、やっぱりわかる？まあね(笑)。
結婚したら遊べなくなるんだから、遊べるうちにしっかり遊んでおかないとさあ。ニッシーだって、今の歳の頃にしか経験できない遊びもいっぱいあるっしょ。男としての経験って言うの？どれだけ遊んできたかで、男の人生に深みが生まれるっていうかさあ――……」
いやいやいや。
遊んで深みが生まれるだなんて口に出しちゃう人生なんてのは、もうこの時点でペラッペラに薄いんじゃないの？
思わず突っ込みたくなるけど、ま、それも個人の価値観。
谷山の浅い人生論に耳を貸す事もなく、ポケットに手を入れて反対側を向いた。
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作者名：kico
| 作成日時：2017年9月27日 15時
