二重施錠 ページ21
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「人生には自分の気持ちだけじゃ変えらんないことだってあるかもしんない。でも逆にどうにかしようと思わなきゃ最初から100パー何も変わんないワケだよ。だったら、変えようと足掻いてみなきゃ勿体ないと思わない？」
「でも…」
私だって考えた。
一生懸命1人で考えて悩んで…
やっぱりどう考えても現実的に無理だ…って思ったんだよ。
涙を零しながら伝えると、「…ね？でしょ？」と笑われた。
「だから、一緒に考えようっつってんの」
「…！」
伸びてきた左手の親指が、私の瞼に滲んだ涙をそっと拭ってゆく。
「1人じゃ限界ってのがあんだから。
Aが抱え込んで苦しいこと、今から1個ずつ一緒に考えて解決してこーじゃないよ」
「…和也と…一緒に？」
「そ。オレと2人で」
「う…」
また涙が溢れてしまい、泣きながらこくこく頷くと、よしよしと笑って今度は胸に抱き込まれた。
「それから…一緒に考える前に1個だけ褒めたげるよ」
「…？」
「勝手に手を離さなかったこと。
アナタ、オレに『もう手を離してもらうべきなんじゃないか…』って言ったんだよ。ちゃーんと手を離す前にオレの同意を得ようとしたでしょ。『和也が手を離すまでは離さない、それだけは絶対だ』って」
「だって…約束したもの…」
たとえ苦しい決断をしなきゃいけない時が来ても…
私の一存だけで勝手に離さない。
「それ、正解だから。忘れんな…」
和也が髪に頬を寄せた。
「二重施錠、ダブルロックだから」
「え？」
「オレも離さない。オマエも離さない。
言ったでしょ？人間ってのは不完全なの。思わぬことで誤作動することがないとも限らない。だからダブルロック。
オレにはあり得ないことだけど、アナタが今回の話で変に負い目を持たないように言うだけ言っときます。もし万が一…オレが誤作動した時にはAがロックして」
「う…」
愛しい人の胸の中で、またこくこくと頷くことしかできなくて。
新しい涙がぼろぼろと大粒の雨のように零れ落ちてゆく。
「あんま泣くと、目が腫れてお化けになっちゃうよ(笑)」
「……」
頑張って涙を止めようと顔を上げたら、「すげぇ顔だな」と小さく笑われた。
「ま、安心しなさいよ。
どんなくしゃくしゃな顔でも、お化けみたいに目が腫れてても、オレはAがいいの。離さない」
さらっと言われてまた泣いて。
髪に顔を埋めた和也から「呪いだよ呪い(笑)」とくぐもった声がした。
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作者名：kico
| 作成日時：2019年5月30日 12時
