来るもの拒まず去る者追わず ページ14
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「最初から、覚悟していたことだもの…。私なら…大丈夫…」
「……」
「私は和也が手を離すまではこの手を離さない。それだけは私の中で絶対なの。
だから…和也に手を…離してもらうしか…ないんだよ……」
「……」
これ以上話すと涙がこぼれてしまいそうだ。
唇を噛んで、盛り上がってきている涙が引くのを待つ。
「……」
黙って聴いていた和也は、これみよがしに大きく溜息をつくと、無言でテーブルの上の煙草に手を伸ばした。
いつもは私の前では吸わないそれを1本取り出して表情を変えずに咥えると、投げやりな仕草で火をつけ、明後日の方向を向きふーっと一度だけ煙を吐いて。
それから、自虐的にクッと笑うと、点けたばかりの煙草をテーブルの上の灰皿に押し付けてすぐに揉み消した。
「あのさ…。さっき言った『事情が変わった』ってやつ」
「…ん」
「それって…“事情が変わったかどうかなんて、そいつの考え方ひとつじゃないの？”」
「……」
「“ひとりで分かったよーなこと言ってカッコつけてんじゃないよ！
オマエはそれでいいかもしんないよ？でもオレはどーなんの！ンなハナシ一方的にされてさ…”」
すーっと和也の笑みが消える。
「“…『はい、そーですか、んじゃ離します』ってオレが言うワケねーだろ！！行かせる訳ねーだろよ！！”」
途中から急に早口で大きく張り上げられた声に、ぐっ…と胸が詰まったけれど。
すぐに目を逸らせて、は！…とまた短く笑われた。
「――――って、オレが言うとでも思った？…残念でした。言わないよ、オレ」
「え…」
「来るもの拒まず去る者追わず。アナタ、オレのそーいうとこ休憩室の頃からよーく知ってるはずだよね」
「……」
確かにあの頃の和也は…
いろんな女の子たちからの誘いの電話を受けては会う約束をしてた…
強い視線が再び私を捉えて、冷ややかに問う。
「あのさ。Aの言う『事情』って何？見合いのこと？」
「…？お見合い？？」
「オレが居るから断ったんでしょ？」
「う、うん…だって和也以外の人とお付き合いするつもりなんてないから…」
「んじゃ、別れて地元に帰れば正々堂々と見合いできる…そーいうことだよね」
「…はい！？」
何を言われているのかすぐには理解できず、訊き返した後で慌てて否定した。
「え！？しないよ！！するわけないでしょう！！そういうことじゃなくて…！！」
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作者名：kico
| 作成日時：2019年5月30日 12時
