一粒 ページ17
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こんなに好きになったのは初めてだった。
私にとって宝物の恋。
この気持ちをずっと大事にしていたかった。
お父さんやお母さんの時…大事な人が居なくなってしまった時の喪失感…孤独感…。
ヒロや叔父さんが居ても、私はお姉ちゃんなんだからって、ずっと1人で頑張ってきて。
いつも頑張らなくちゃ、頑張らなくちゃ…って必死で生きてきて。
そんな私に、無理に頑張らなくていいんだよって言ってくれたのが和也だったの。
頑張りすぎなくても、和也と一緒ならこの世界はこんなに楽しい場所なんだ、って知った。
和也が幸せなら私も幸せ。
だから、つらくてもその日が来て手を離される時には笑って背中を押そうって…。
それが最後の私の役目なんだと思おうとしてきたの。
だけどね。
和也の手が他の誰かの手に差し出されるなんて…
隣に立てるその誰かが、和也の血を繋ぐことだって許されるなんて…
本当は、想像しただけで苦しくて吐きそうで。
私以上の愛情だなんてあるはずがない！！
だってこんなに好きなんだよ！？大好きなんだよ！？
私が傍に居て、私が和也の手を離さずにずっと傍に居たい！！！
イヤだよ！！
他の誰かの手なんて取ってほしくない！！！
失いたくない！！
もう1人に戻りたくなんかない！！
手を離されたくなんかない！！
和也が好きなの！！！
大好きなの―――――――！！！
これまで心の奥底にしまい込んできたいろんな思いが溢れてくる。
泣くな泣くな泣くな！！！
おまじないのように唱えるだけで、ごちゃ混ぜになって押し寄せてくる感情をもう自分で制御できなくて。
私は瞳を見開いて涙を止めて、泣きそうな声でただ子供のように繰り返すことしかできなくて。
「離れたくなんかない…！だって、好きなのに…」
「ん…」
「こんなに和也が大好きなのに…」
「ん…」
「なんで…離れなきゃいけないの…」
「ん…」
「傍に居たい…絶対にイヤ…たとえ傍に居られなくても、この手はずっと…絶対に離したくなんかな――――……」
言い終わらないうちに、和也の左腕に引き寄せられて強く抱き締められた。
愛しい人の肩で上を向き、浅い呼吸で頑張って涙を零さないようにこらえていると。
「…よく言えました」
「…え」
「オレも…おんなじよ…」
耳元で響く、泣きそうなほど優しい囁き声…
「…離さない」
「う…」
ほどけていく気持ちと一緒に、ついに、一粒…
涙がほろりと零れて落ちた――――――。
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作者名：kico
| 作成日時：2019年5月30日 12時
