午睡 ページ29
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「待ってよ叔父さん、だからそうじゃないってば」
「まあまあ、姪御さんも照れておられますから。結婚式だなんて今日明日の話じゃないんですもんねえ(笑)？」
理学療法士さんが取りなしてくれているけれど、そもそもの話の方向性が間違っていて。
「いえ、違うんです、だからそういうことではなくて…！」
「おや、こりゃ早まったか！わっはっはっは……っと、あ、あいたたた…っ！！」
「え？叔父さん！？」
急に痛みを訴えた叔父さんに慌てた。
正直に結婚するつもりはないと話して興奮させてしまった、あの初日の出来事が頭に蘇る。
「大丈夫！？痛むの！？」
「いや、大丈夫だよ。笑い過ぎてしまったようだ(苦笑)」
よかった…
また興奮して痛みが出てしまったのかと思った…。
ホッと胸を撫で下ろす。
何だか、今はもうこれ以上何も言えなくなってしまった…。
「調子に乗って喋り過ぎたよ。疲れてしまったから、少し眠ることにしよう。
明日は、サナちゃんのご両親との食事会だったねえ。よろしく頼むよ、A…」
「…うん。そうだね。大丈夫、任せておいて」
「ああ。わしも明日はまた朝からリハビリを頑張ることとしよう…」
叔父さんは穏やかに微笑んで静かに目を閉じた…。
＋＋＋
叔父さんはかなり疲れていたようで、面会時間を過ぎても目を覚ます気配がなかった。
若先生も往診から次の予定に行かれたらしく、私も先生に納得してもらえる的確な説明を思いつかなくて肩を落とし病院を後にした。
ヒロは帰りが遅くなると言っていたので、実家の冷蔵庫のありあわせのものをテーブルに並べて1人簡単にご飯を食べることにしたけれど…
食欲がなくて溜息をつく。
どうして実家に帰ると決まった時点で…
いや、もっと遡って、ヒロがうちに泊まりに来るとわかったあの時点で…
和也とのことをどう説明するべきか、前もって答えを準備しておかなかったんだろう。
ヒロに納得してもらえていたならば、叔父さんだってきっとヒロから心配要らないよと説明を受けて安心してもらうことができたはず。
そうすれば、若先生もお見合いの話や興信所の話なんて持ち出すことはなかっただろうし、こういうことになってもマサトとのことはしっかり否定できたのに。
今更悔やんでも、もう遅い。
1人でいくら考えても、これだと思える打開策は何も思いつけなくて。
重い気持ちでご飯を食べ終えて、ごちそうさま…と手を合わせ、食器を手に流しに立った。
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作者名：kico
| 作成日時：2019年1月18日 12時
