意欲 ページ28
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「いやあ今日はさすがに疲れた。ハードだったなあ。午後のリハビリなんて、マサト君のおかげで頑張れたようなものだよ」
「…若先生からも聞いた。今日も顔を出したって…」
「ああ。忙しいのにわしのことを帰るまで気に掛けてもらって、申し訳ないくらいだなあ」
「あのね、叔父さん、その…マサトのことはね…」
違うんだよ、そういうことじゃなくて…と、喉まで出かかっているけれど。
もし、口に出してしまって、叔父さんのリハビリ意欲を下げるようなことになってしまったら…。
迷いが邪魔をする。
「…A？」
「……」
「叔父様、とっても頑張られていましたよ。姪御さんの彼氏に恥ずかしい所は見せられないって。失敗しても何度も立ち上がられて」
理学療法士さんが笑顔で続けると、叔父さんはいやいやと首を振った。
「マサト君がお手伝いしましょうかと言わんばかりに立っていたからねえ。さすがに甘える訳にはいかんよ。
気持ちが前向きだと、痛みもどんとこい！で、つらくとも最後まで頑張れるもんだ。わははは」
「……」
胸に広がるのは、叔父さんを騙しているも同然の後味の悪さ。
『あらゆる手を尽くさせてもらうと言っただろう？』と、マサトが勝ち誇った顔で笑っているのが見えるようだ。
無言の私をよそに、叔父さんは嬉しそうな顔でベッドに横になった。
「さあ、この調子でAの結婚式には是が非でも元通り元気になって、歩いて出席しなければなあ」
「私は結婚なんて…！」
それだけは否定したくて、顔を上げる。
「ああ、わかってるさ。わしもあれから考えてみたんだ。
もうわしらの頃とは時代が違う。今は何も焦って結婚する必要はないかもしれんなあ。お前の言うことも尤もだよ。
いいじゃないか、急ぐ必要はない。いずれは…の話だ。当のマサト君がああ言ってくれたんだから、わしは安心してリハビリに集中できる」
「あのね、その…とにかくその話はあり得ないし、マサトのことだって実際はそうじゃなくて…私は、今お付き合いしている人と一緒に居られるだけで本当に十分幸せだから…」
リハビリ意欲に影響しないように、細心の注意を払って言葉を選びつつ、何とか本当のことを伝えようとしてみたけれど…
「いやいや、昔からこの子は照れ屋で意地っ張りでしてねえ。一度言い出したらきかんのですよ(笑)」
曖昧な言葉で届くはずがない。
叔父さんは、気にも留めずに理学療法士さんと話を続けた。
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作者名：kico
| 作成日時：2019年1月18日 12時
