ベッドサイド ページ27
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結局、肝心の話に至ることなく、私は院長室を出た。
マサトの話の前に、まず、今の私の状況を若先生に納得してもらう必要がある。
和也のことは明かせない。
でも、これまでと同じ説明を繰り返すだけじゃ納得してもらえない。
だからと言って、嘘や適当な誤魔化しが通用する若先生じゃないのはわかってる。
素性調査を依頼されてしまうような事態だけは避けなければ。
でも…どう説明すればいいのか…。
まだ叔父さんの戻っていない病室で、1人ベッド周りを片付けて洗濯物の入れ替えをしながら考えてはみるけれど、名案が浮かぶことはなく。
考え疲れて、一息つこうと思い始めた頃。
「おお、A！」
廊下の向こうからリハビリを終えた叔父さんが姿を見せた。
「…叔父さん！？」
えっ、うそ…！
なんと昨日まで車いすや歩行器を使っていた叔父さんが、ふらつきながらも自力で立っている。
しかも、理学療法士さんに付き添われて、自分で手すりを持ちながら廊下から病室にゆっくりと歩いて入って来た。
「毎日悪いねえ。仕事は終わったかい？」
「う、うん。それより、え？足は？歩いて大丈夫なの…？」
「はっはっは…驚いたかね？わしもだよ。
昨日から痛みが信じられないほど軽くなってねえ。こちらの理学療法士の先生が『次の段階まで身体を動かしてみましょう』と仰ってくれて、今日の午後からは歩行器なしで歩く練習を始めたんだよ。
少しの距離なら見ての通りだ。嬉しいねえ！」
叔父さんは、よいしょよいしょと声に出しながら、生き生きとした表情でベッドサイドに腰掛けた。
「痛みは？動かしてつらくない？」
「そりゃあ少しは痛むが、ゆっくりなら大丈夫だよ」
「そうなんだ…！」
明るい返事に、私も嬉しくなった。
「よかったね、叔父さん！！本当によかった！！」
「こんなに気持ちいい汗は久しぶりだなあ」
「姪御さんも喜んでくれて、頑張られた甲斐がありましたね」
理学療法士さんが、使わなかった車いすをベッドサイドで畳みながら微笑んだ。
「叔父様は、昨日も今日も本当に熱心にリハビリに励んでおられていて。辛いメニューも幾つかあったんですが、しっかり指示通りのプログラムをこなされたんですよ」
「そうなんですね。ありがとうございます！叔父さん、すごいよ！驚いちゃった！！」
この調子でいけば、先生が言われていたように退院も近いかもしれない。
叔父さんの頑張りは、本当にすごい。
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作者名：kico
| 作成日時：2019年1月18日 12時
