契約ノカタチ Act5【KN】distance 2 (ページ26)

今日:7 hit、昨日:49 hit、合計:182,272 hit

素性調査ページ26

.

「そうじゃ。
　お前さんの話を聞く限り、このまま東京で暮らしても到底幸せになれるとは思えなんだ。
　叔父さんもヒロアキも心配しておったから、少々強引な手を使ってでも儂はこっちに呼び戻すつもりでおったんじゃよ。
　まずはお前さんをそこまで誑かしておるのはどんな輩か、東京で腕のいい興信所を幾つも知っておるからのう。まずはその輩の素性を調べ上げさせてやるわと考えておったんじゃ」

「ええっ！！」

予想だにしてなかった話に顔が一気に強張った。

「そんな悲愴な顔をするでない(笑)。
　調べさせると言っても、よくある見合い前の素性調査と同じじゃ。氏名や住所、職業、周囲での評判、せいぜい後はお前さんとの付き合いの深さ…その程度の簡単なものじゃよ。
　まあ、マサト君の素性が明らかになり叔父さんも安心しておる今となっては、もうその必要はないがのう」

若先生は愉快そうに肩を揺らしているけれど。

簡単な素性調査でわかる程度の情報だったとしても、第三者に知られてしまったら！
それが和也だとわかる形で外に漏れてしまったら…！！

「叔父さんのリハビリも上手くいっておる。
　人生設計も経済力もある御人が幸せにしてくれると言い、お前さんもその手を離すつもりがないと言い切っておるんじゃから、儂の介入する余地はなかろうて。
　幸せになるんじゃよ。儂らの何よりの願いじゃ」

「でも…あの…」

困った、否定できない…。
マサトとの関係を正直に明かせば、話がまた逆戻りしてしまう。
若先生のことだ。冗談ではなく十分にあり得る話だと思う。

和也たちは、これから一番大事な時期を迎えるというのに。
あの写真の記事の件で迷惑をかけたばかりの私が、こんな余計な話でまた和也たちやマネージャーさんたちの足を引っ張ってしまう真似なんてできないよ――――…。

コンコンとノック音がして看護師さんが先生を呼びに来た。
農村地区の患者さんの体調が悪くなって、急な往診が入ってしまったらしい。

「うむ、わかった。すぐに行こう」

先生が曲がった腰を伸ばして立ち上がる。

「…という事じゃ。済まなんだが、話の続きがあるならば改めてにして貰えんかの。
　叔父さんのリハビリ意欲は本人の気持ちに大きく左右されておる。万が一にもここで落胆させて自信を失くしてしまわぬように、Aちゃんも温かく励ましてやりなさい。
　ただ、張り切り過ぎも禁物じゃ。無理せぬように頑張ってもらわねばのう」

＋＋＋