一計 ページ25
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「いや、しかしAちゃんも見たかね、昨日の叔父さんのあの明るい顔を」
「…あ、はい」
「お前さんの帰省で明るくなっておった気持ちが更に前向きになり、リハビリに対する考え方も積極的になっておる。今日も朝から熱心にリハビリに取り組んでおった。感心なことじゃ」
「やはり先生がおっしゃっていたように、叔父の痛みは精神的なものだったと思っていいんでしょうか」
「ああ、機能的には順調に回復しておるから、間違いなかろうて。あとは気持ちの問題じゃ。今が正念場じゃよ」
先生は私に今の叔父の状態をわかりやすく説明してくれた。
「リハビリの難易度が上がるこの段階が一番精神的にも肉体的にもつらい時期じゃが、今の叔父さんなら恐らく順調に進むじゃろう。前向きな気持ちでこのまま進めば退院もすぐじゃ。
しかし、その反対に、もしもここでリハビリに躓いてしまったら…」
「……」
言葉を切った先生に、息を呑む。
「叔父さんにとって、ここで今の前向きな気持ちを失ってしまうということは、つらいリハビリに向き合う自信まで失ってしまうことになりかねん。
そうなれば、リハビリにも消極的になり、退院どころか、今の日常生活動作のレベルを維持するのも難しくなるじゃろうて。それだけは避けねばならんのう」
「つまり…今の前向きな気持ちをなくしてしまうようなことがあれば、叔父さんは今よりももっと動けなくなったり痛みが酷くなったりする可能性がある…ということですか…？」
「そうじゃ。このリハビリに叔父さんの今後が掛かっておるんじゃよ」
「……」
「…とまあ、それが今の現状ではあるんじゃが、何も深刻に考えすぎる必要はない。今の前向きな気持ちでリハビリを進められるのなら心配は要らんじゃろうて。
叔父さんの前向きな気持ちの一番の原動力は、Aちゃんやヒロアキの幸せな未来じゃ。今の叔父さんは安心してリハビリに集中できておるからのう」
満足げに頷いた若先生は、ふぉっふぉっふぉっと笑いながら悪い顔を見せてきた。
「それに…実はのう。
今だから言えることじゃが、ここだけの話、儂は一計を企んでおったんじゃよ」
「一計…ですか？」
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作者名：kico
| 作成日時：2019年1月18日 12時
