院長室 ページ24
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叔父の病院に着いたのは、もう夕方近い時間になっていた。
病室には姿がなく、看護師さんに尋ねると、今はリハビリ室だという。
今日も朝から俄然やる気になっているそうで、午前のリハビリの後はお昼ご飯を早々に食べ終えて、1時間ほど前から午後のリハビリにもう取り組んでいるらしい。
ちょうどよかった、今のうちにまずは若先生から…と、院長室を訪ねた。
「おお、儂もAちゃんと少し話をしておこうと思っておったんじゃよ。まあ入りなさい」
先生は、院長室の応接セットに私を案内した。
「昨日は本当に驚かされたのう。マサト君の件といい、儂が進めようとしておった例の見合い話の件といい…」
「私もびっくりしました。お相手の方って、私が出張でお世話になっていた…」
「そうじゃよ。お前さん、あれの倅と知り合いじゃったそうじゃのう」
センター長さんの名前を出してみると、先生は苦笑いをして大きく頷いた。
「Aちゃんがこっちのテレビ局に出張と聞いてはおったが、よもや互いにそこで顔を合わせておったとは…儂の方が聞いてびっくりじゃ。世間は広いようで狭いものじゃて」
ふぉっふぉっふぉと先生が笑う。
「仕事も同業、いい話じゃったんじゃがのう。
顔見知りだったとは更なるご縁じゃよ？今からでも遅くはない、これも何かの御引き合わせじゃ。人生経験じゃと思うて一度試しに見合いしてみんかのう？お前さんに少しでもその気があるならば儂が間に入って…」
「あ、いえ。先生、私にはそのつもりがありませんので本当に結構ですから…」
「そうかね…まあ残念じゃが、仕方あるまい。マサト君もああ言ってくれておることじゃからのう」
「……」
いよいよ本題だ。
顔を上げて背筋を伸ばし、「先生、その件なんですが、ご相談したいことがあって…」と切り出した。
「ほう、何じゃね？
そういえば、さっきまで叔父さんの所にマサト君も来ておったが…」
ええっ！
マサトが…また！？
「『出張が終わったので東京に戻る前にもう一度ご挨拶を』と言っておったわ。何とも芸が細かい御人じゃのう」
「……」
地元局からの帰りにここに寄ったんだ…。
マサトは用意周到で、外堀を埋めて相手を自分のペースに持ち込むのが得意な人だ。
仕事の交渉事ではいつも感心させられているけれど、まさか、我が身に降りかかって来るなんて…。
とにかく冷静に、私自身がしっかりしなきゃと心の中で喝を入れた。
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作者名：kico
| 作成日時：2019年1月18日 12時
