契約ノカタチ Act5【KN】distance 2 (ページ15)

今日:23 hit、昨日:49 hit、合計:182,288 hit

駒ページ15

.

「通常、いち地方局からの急な依頼に在京キー局がこんなにきめ細やかに応えたりしないよ。
いくら系列が同じでも別会社だからね。
　しかも、お客様相談室は繁忙期だろう？それなのに、Aの出張は総務課に上から降りてきた時には既に決定事項だった」

確かに、私もこんな出張は初めてではあるけれど。

「どちらかだけならまだしも、同じ地方局絡みの急な案件が2つ身近で同時期に重なるなんて偶然にしては出来過ぎている気がしてね。
　調べてみたら、なんと、お前の出張が総務課に下りてきたルートと俺の出張を命じた役員の指示ルートは全く同じだったんだ」

「ええっ！！」

「同時期に同ルートで同じ地方局絡みの急な出張…見えないところで誰かの意図的なものを感じるよ」

「そんな…一体誰が…？そんなことして何になるの…！？」

「問題はそこなんだ。俺の出張もお前の出張も先週金曜日までは一切出てなかった話だよ。どちらもこの数日で急に決まっている」

マサトが私に向き合った。

「土曜日以降で何か思い当たることは？この数日で変わったことはなかったか？」

「……」

先週の土曜日以降…。

え…土曜日…？

まさか…

「うちの役員より上のクラスに物が言えるなんて、かなり大きな力だよ。
　地方局にそんな力はないから、うちの局に繋がりのある第三者の差し金だと見るのが妥当だろうな」

「…ここのテレビ局やうちの局以外の…ってこと？」

「ああ」

唯一思い当たるのは、土曜日からのあの一件…

あの時…
味方になってくれたマネージャーさんの最後の言葉…

『おかげで私も肚が決まりました』

つまり、マネージャーさんもどこかから何かの決断を迫られていたということで…
それは恐らく…

でも…それとこれとは全く……。

「……」

「だんまりか。何かあったってこと？」

「…マサトに話すようなことは…何もないよ」

「そうか…。まあいい。とにかく、俺は俺のやり方で動くから」

「どうするの？」

「決まっているだろう。組織に属している以上は社命を全うするさ。
　今後の昇進の為に役員との関係も各地方との個人的なパイプも太くしておく予定だったから、ちょうどいい。この出張を自分自身の為に有効に活用させてもらうまでだ。
　ただ、駒として他人にいいように使われるのは性に合わない。誰が何を画策しているのか確かめながら動くことにするよ。
　Aも気を付けた方がいい。それだけ伝えておこうと思ってね」

.