証人 ページ11
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「Aと俺は別れている。それはこの間話した通りだよ」
「はい」
「……」
「しかも、俺は別れた後も警戒せずに信頼してくれていたAの好意につけこもうとしたことがある。…未遂に終わったがね」
「…未遂…って……え？」
「ちょっと、マサト！何も弟にそんなことまで…！！」
「…あの…それって…まさか…」
私の反応にヒロが顔を曇らせた。
「Aに落ち度があった訳じゃない。それなのに、未遂とは言え、俺はAに対して申し開きの出来ないことをしてしまった。
ちなみに、Aが今の男と付き合い始めたのはその後だ。俺とは関係修復に至ることもなく…そうだよね？」
「…そうだけど、私がその人の手を取ったこととマサトと別れたこととは何の関係もないよ。その人が居たからマサトに恋愛感情を持てなかった訳じゃない。
あの時点で既に恋人としての関係修復はあり得なかったし、マサトからの謝罪でその話は私の中で終わってる」
「ああ、わかっている。
しかし、どんな理由があろうと、Aの意思を無視して力に訴えようとしたことは男として恥ずべき行為だ。たとえAがどう言おうと簡単に許されるべきことではないよ。
俺は自分の未熟さを本当に反省して、二度とAの信頼を裏切るような真似はしないと決めている。
だから、俺とAとの間にいま存在しているのは同じ職場の同期としての関係だけ。プライベートでの接点はもうないし、Aには俺に対して恋愛感情はない。そうだろう？」
「……」
こくりと正直に頷いた。
「よし、ヒロアキ君が証人だ。俺たちがそんな関係だという前提の下で提案するよ。
俺をこのまま利用してみないか？」
「利用？」
「ああ。さっきの話。見合いの話もあるんだろう？俺はダミーで構わない。このまま叔父さんの前であいつの代わりとして俺を利用すればいい。
無論、お前に手は出さない。東京で恋人面するつもりもない。今のまま仕事上だけの関係で構わないよ。ただ、お前の地元対策として俺を好きに使えばいい。それだけだ」
「ふざけないで！！どうしてマサトにそんなことお願いしなきゃいけないの！？嫌だよ、利用なんてしない」
「感情論じゃなく、損得で判断してほしい。叔父さんのリハビリにも一役買ったんだろう？冷静に考えてみれば悪い話じゃないと思うけど？」
「冗談やめてよ！！そんなの考えるまでもなく絶対に…」
「…見返りは何なんですか？」
「ヒロ！！」
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作者名：kico
| 作成日時：2019年1月18日 12時
