お疲れさーん！ ページ3
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そして数時間後。
仕事を終えてやって来たAを出迎えて驚いた。
「えっ！？…それ着たまま…？」
白い小花の咲いた深い紅色の浴衣姿。
黄色の帯。
「あ、今日は浴衣で仕事だったの。
せっかく着付けてもらったのをすぐ脱ぐのはもったいなくて…和也に見せたいなーと思って恥ずかしいけどそのまま来ちゃった(笑)。…変かな？」
「……」
実際に目の前で見た浴衣姿は、画面でチラッと目にした以上に新鮮且つ魅力的で、Aにすげー似合ってて。
あれだけ面白くなかった気持ちがウソみたいに溶けてゆき…
「やっぱり変？…1人で浮かれちゃって恥ずかしいな」と苦笑いしてるAを、思わずぎゅっと抱き締めた。
「う…和也、苦しいよ(笑)」
「…すんごい可愛い」
「！///」
小さく囁くと、Aは嬉しそうに笑ってぎゅーっと抱き締め返してきた。
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手を引いてリビングへ。
ほい、と冷蔵庫から出した冷たい缶ビールを渡し、立ったまま「お疲れさーん！」とその場で乾杯。
「あー、うまっ！」
「冷たくておいしいー！」
「アナタ働いた後だから、きっとオレ以上に旨いよね」
「うん最高！」
ベランダとルーフバルコニーから差し込む夕日。
広いルーフバルコニーなら、万が一にも外から見えることはない。
思い付きで「出てみない？」とAの手を引き、カラリとガラス戸を開けた、
「わあ…きれい……！！」
既に日が落ちた黄昏時の空は、一面に広がる地平線のオレンジ色から天空の濃紺色までのグラデーション。
「すげーな」
「うん…」
これまでだって何度も見てるはずの景色だけども、全然記憶に残ってない。
そーいや、Aとこんな風にゆっくり眺めたこともあんまなくて。
「本当に綺麗…。こんな光景を和也と見れているだけで幸せ…」
缶ビールを手に立ったまま隣を見ると、Aは本当に幸せそうに空を眺めてる。
その表情が急に愛おしくてたまんなくなり、不意打ちで、ちゅっ…と触れるだけのキス。
唇を離すと、びっくりしたような恥ずかしいような顔で、ふふ…と笑みを見せてくる、そこがまた愛おしい。
照れてる浴衣姿のAを抱き寄せ、2人でクスクス笑い合う。
「やっぱさ、それ…すんごい似合ってるよ」
「ほんと？…嬉しいな。ありがと///」
浴衣の袖を広げながら、あ…そうそう！一緒に食べようと思って屋台に寄って買ってきたの！と、Aは手に提げていた白いビニール袋を掲げて見せた。
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作者名：kico
| 作成日時：2020年7月2日 23時
