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「えっ///！？ちょ、ちょっと、こんなところで何を…///！！」
「大丈夫、さっき中から鍵を掛けておいたから」
「でも、ドアのガラス越しに…」
「見えないよ、ドアの真横だからここは死角」
完璧よ？とばかりに、ふふんと笑う。
「そ、それはそうかもしれないけど…でも、」
「あーー、もう、相変わらずうるさい口だよね！」
「！！？」
ちょ…っ！！
抵抗する間もなく顔が近付いてきて、キスされた。
驚いて手を突っ張ろうとするけど、ぎゅっと抱き締められたら一気に力が抜けていく。
唇を重ねて、ちゅっ…と。
柔らかさを確かめ合うような、ただ触れるだけのキス。
すごく優しくて、鼻の奥がつんとする。
ゆっくりと唇を離すと、見上げた和也の顔がぐにゃりと歪んで、瞳からぽろりと涙が零れた。
ダメだ…弱くなったのかな。
昔はこんなことで泣かなかったのに。
今は和也の顔を見るだけで泣けちゃうよ。
「う…」
「どーした(笑)？」
「わかんない…でも、いまは和也の顔を見るだけで泣けちゃう…」
「いーよ、そんじゃ泣いたらいーじゃない(笑)。
オレの前で無理しなくて大丈夫だから。いつも言ってんじゃん」
最後まで聞かせず、和也の両腕に肩をしっかりと抱き直されて顔を胸に埋めた。
ありがとう、和也…
ちょっとだけ。
今だけ、甘えさせて。
そしたら、また今まで通りに前を向けると思うから。
毎日頑張っている和也に恥ずかしくない仕事をしなきゃと思っているのに…
こんなことで凹むようじゃダメだよね。
悔しいな…
強くなれないのが悔しい。
でも、こうして図らずも和也に受け止めてもらえたことが、それ以上に嬉しいなんて。
和也と付き合う前は仕事で凹むことはあっても、こんなことで誰かの前で泣くなんて思ってもいなかった。
「人を好きになったら…弱くなるのかな…？」
ふと…深く考えずに零れた言葉。
「や、違うな…。逆じゃない？」
自信有り気な返事が上から聞こえてきた。
「こうして補給できたら、強くなんじゃねーかなと思うけど」
その証拠に、もうスッキリしたんじゃない？…と言われて気付く。
あ…。ほんとだ……。
「オレもね、一緒なの」
そう言って、和也が私の下瞼をそっ…と辿る。
涙を拭った後で、よしよし…となぜか頭を優しく撫でられて…
ああ…
それだけなのに、凹んで絡まってた心が解けてゆくのがわかる。
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作者名：kico
| 作成日時：2020年7月15日 20時
