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「！」
振り向くと、やっぱり…。
「…っつっても、今朝アナタ見送ってからだから、4…5…あ、実際は6時間ぶりか(笑)」
和也が入口のドアを開けて壁に凭れて立っている。
「うそ、なんで…」
「や、なんとなーく、久しぶりにここのドアのガラス窓覗いてみたら、まー、案の定華奢な事務服が窓際に居るじゃない。ほーんと、アナタここ好きだよね(笑)」
「……。今日、うちで収録だったっけ…？」
「ん、今週末に撮る予定だった個人仕事のインタビューを、今日の空き時間に前倒しで撮っちゃおうってなったらしくてさ。急に決まったの」
そうだよね。
朝出る時には、そんな話はしてなかったもの。
「ま、ちょっとだけ早く着き過ぎちゃったからね」
和也は廊下を確認すると、壁に凭れたまま後ろ手にドアをガチャリと閉めた。
「で？なに、凹んでんの(笑)？」
「…え？」
「さっきはお疲れさん」
やだ…見られてた…！？
「…うん。でも、ありがと。大丈夫だよ…(笑)」
困ったな。
何だか、胸がいっぱい。
どうしたんだろう。
これだけで泣きそうだ。
「今回は私の所為で話が大きくなっちゃって…失敗しちゃった。
まだまだだよねー。何年この仕事やってるんだろう…イヤになっちゃう(笑)」
「……」
「…あ、いいの？こんな所に来て。もう収録が始まるんじゃない(笑)？」
「……」
「和也の顔を見たから、元気出ちゃった(笑)。ほら、私は全然大丈夫だから、もう行って(笑)？」
鈍い私でもさすがにわかっちゃう。
ありがとうね、和也。
私が凹んでるんじゃないかって、心配して様子を見に来てくれたんだよね。
でも、忙しい和也に、あんな失敗をした上に勝手に凹んでいる情けない自分をこれ以上見せたくない。
ごめんね。家に帰る頃には、ちゃんと復活していつもの私に戻っているから、今は１人で凹ませて。
「バーカ」
「え？」
「オマエちょっとこっち来なさいよ」
「え？」
「いいから、こっち！渡したいもんがあんの！」
「？渡したい物？？」
閉まったドアの側に立ったままの和也の前まで近づくと…
急に腕をぐいと引っ張られて、入口の横の壁でぎゅーっと抱き締められた。
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作者名：kico
| 作成日時：2020年7月15日 20時
