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目元をさりげなく手の甲で押さえて、苦笑するA。
やだな、私…
そんなつもりなかったのに、すごく面倒くさいこと言ってるね…。
めんどくさい？Aが？
こんなの全然入んないでしょ。
オレのが100万倍めんどくさいから安心しなさいよ。
面倒かどうかは相手で決まる。
Aをめんどくさいと思ったことがない。
そもそも面倒の定義ってなに？
煩わしく思うかどうかって、相手が誰かによっても違うでしょ。
…ってほら、やっぱオレのが面倒じゃん(笑)。
再確認だけど、知っての通り、ミイナ程度の付き合いならオレ他にもいーっぱいたからね。
彼が飄々と言い放つ。
「…ヤになった？」
首を横に振る。
ならないって知ってるくせに。
そう返すと、ふは…と笑われた。
「そだな。知ってる。こんくらいでヤになんなら、もうずっと前に別れてんのよ、オレたち」
髪を撫でて抱き締められて。
「わかってると思うけど、もっかい言うからしっかり覚えてて。
軽い付き合いならいっぱいあったけども、ここまで重い付き合いできてそれが全く苦じゃないヒトなんてこの世に1人しか居ないんだから」
耳元にそっと口づけられた。
A…と名前に続けて囁かれた彼の想いにほろりと涙が一粒零れてしまい、見つからないように慌てて彼の肩口に顔を埋めて拭いた。
それなのに、なーにこんなことで泣いてんのよ、と彼が顔を肩から剥がして涙の後に唇を這わせるから。切なくてまたほろりほろりと涙が落ちる。
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もう一度、触れ合った唇。
長めのキスを交わしている途中で、セットしていたアラームが鳴り、あ…っとAが身体を離す。
中断されて不機嫌に口を尖らせた彼に、「14日になったから…」とテーブルの下に用意していたリボンを掛けた小箱を渡した。
「今年も作ってみたの。日付が変わったら一番に渡しておきたくて…」
「…おっ、うまそ！」
小箱を開けて嬉しそうに細められた目、緩められた口元に嬉しくなる。
この時期のチョコレートなんてもう感覚が麻痺しているかもしれないけれど…。
確かにこの時期チョコもらったり食べたりする機会が増えるけども、毎年Aのはオレにとってトクベツなの。
いつもありがとね。
そう言ってふふんと笑うと、彼は大事そうに蓋を閉めた。
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作者名：kico
| 作成日時：2020年7月15日 20時
