星屑箱【KN】 (ページ15)

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「…んーーっ！…あー疲れたー！」

しばらくして、大きく伸びをした彼が台本を置き、体重をかけてくっついてきた。
Aがクスッと笑う。

「お疲れさま。終わったの？」
「完っ璧。オマエも終わんなさいよ」

♪～と、会話に被ってお風呂の電子音が響いた。

「洗濯物を畳み終えたいから、和也、お先にどうぞ？」
「一緒に入んない？」
「遠慮します(笑)」
「えー、せっかく早く帰って来れたのに冷たくない(笑)？」

また露天風呂ごっこやっちゃおっか？とニヤニヤされて。
だめだめ、風邪引いちゃうからもうやらないって言ったでしょ！と真っ赤になり言い返す。

「そんじゃ今日はちゃんとドアを閉めるから、一緒に…」
「だーめ(笑)！」

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彼が1人でお風呂に入っている間に、チョコレートの仕上げ。
ココアパウダーをかけて、可愛くラッピングして、よし、これで準備OK。

リビングに戻って、何気なくテレビを点ける。
洗濯物を再び畳んでいると、耳に入ってきた声に手が止まり、顔を上げた。

画面に流れているのは、他局バラエティのミイナさんの密着インタビュー。
MCの芸人さんから「最近ますますキレイになった」「トークもいい、マイクとの距離の取り方も慣れてきた」と褒められてる。
はにかんだ笑い方も、舌足らずで甘えた話し方も、ミイナさんのキャラに合っていて…
女性の自分でさえ、可愛いな…と思ってしまう。
「男はみんなこういう女の子が大好き」と言うMCの言葉に、彼もそうだと言われている気がしてチクリと痛みを感じた。

チャンネルを変えずに直視している自分を馬鹿げていると思うけど。
今日、あんなことを言われたからなのか。
ここでチャンネルを変えたら、ミイナさんから逃げるみたいに思えて変えられない。

テレビ画面では、料理が趣味だというミイナさんが、手料理をスタッフに披露していた。
自分より、ずっと手際も見栄えもいい料理たち。
テーブルに品数もたくさん並んでいる。
美味しい、スタッフ優先で振舞う様子が優しい素晴らしいと大絶賛されていて。

それに対する、うふふ…と肩を竦めた愛らしいコメントの数々も。
《世話をやいてあげるのが好きなんです》
《彼氏にもこんな感じですよ》
《「うるさいよ」って怒られたら「ごめーん」って(笑)》

聞いた瞬間、彼がよく口にするそのフレーズが脳裏で彼の声で再生され、その隣でごめーんと可愛く勝ち誇って笑うミイナさんが見えてしまい、慌てて首をぶんぶん振ってくだらない妄想を振り払う。

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