今のうち ページ1
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「お誕生日おめでとう！」
「ありがとうございまーす」
食前酒の小さなカットグラスを軽く合わせると、チン…と澄んだ音が2人きりの店内に心地よく響いてゆく。
＋＋＋
少しどころか、2ヵ月以上…いや、3ヵ月近く遅れてしまったお誕生日のお祝い。
和也も私も、今年の春から夏にかけては去年以上に忙しかった。
特に6月なんて、見事なまでに予定がまったく合わなくて。
日付が変わる時間に慌ただしくビールで乾杯するだけの簡単なお祝いしかできなかったお誕生日から、7月になり、8月が過ぎ、もう9月。
『誕生日プレゼント？決まってんじゃん。Aってことで』
なんてふざけられたまま、怒涛の夏はあっという間に過ぎて、季節は秋になった。
ようやく最近になって和也たちも少し落ち着ける時期になったようだけど、それもほんの1〜2週間のことらしい。
既に決まっている大きなお仕事やイベント、コンサートツアーの準備だけでなく、新しい仕事もどんどん入ってきているようで、すぐにまた忙しい日々が始まると聞いている。
だから、今のうちに。
『バーカ、いつのハナシしてんの(笑)。いーよ。別にめでたかないし、今さらでしょ』
和也はそう言って笑うけど。
やっぱり年に一度の特別な日なんだもの。
短い時間ではあっても、日ごろの忙しさやお仕事のしがらみを忘れて、和也が特別な気分で楽しく寛いでもらえたらいいな…って。
『…んじゃーさ、物は要らないから一緒におっちゃんの店に行こっか』
私の気持ちを伝えると、和也からはそう返事が返ってきた。
『年が明けて仕事が落ち着いたら一緒に行こうっつってたのに、結局オレが忙しくて行けなかったじゃん。
今なら追っかけて来てる記者もマネージャーが撒ける程度だから』って。
言われてみれば、去年の夏にそんな話をしていたままだ。
私は時々1人でお邪魔しているけれど、和也は出前でお世話になるだけで全然お店に行けてない。
あ…いい機会かも！
和也の希望とあらば…と、今年のお誕生祝いは女将さんの定食屋さんでさせてもらうことになった。
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『席だけ予約しといて』と頼まれて、お互いの仕事終わりに時間を合わせて現地集合。
入口の引き戸に“本日の営業は終了しました”と札が下りている店内には、女将さんと店主のおじさんの他には誰も居ない。
早く着きすぎてしまった私は、いつものカウンター左隅の席に座り、おしぼりをいただいて和也を待つ。
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kico(プロフ) - あさひさん» あさひさんコメントありがとうございます！某その節は「もう続きは書けない＞＜」って散々愚痴を零してましたもんね(苦笑)^^;このタイミングで書けて良かった。今の幸せな2人を見届けてくれてありがとう(*´ω`*)大感謝です(感涙)！ (2019年10月27日 9時) (
レス) id: 890f6f329d (このIDを非表示/違反報告)
あさひ(プロフ) - kicoさん、素敵なお誕生日のお話ありがとうございます！今の二人が変わらず幸せで、私も幸せですー！定食屋さんのお話、もう読めないかなと思っていましたが、読めて嬉しいです！YELLOW MAGIC 読み返してきます！ (2019年10月26日 12時) (レス) id: 1753a678de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kico
| 作成日時：2019年10月11日 18時
