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ひらひらと舞い落ちて来る花びら。
ぬるい飲み物が嫌いな和也は、直飲みへの興味がすっかり失せたらしく、コップに熱々のままのコーヒーを手酌で注ぎ、隣で音を立てて啜っている。
「あー。やっぱうめーなー、Aのコーヒー…」
「…でしょ(笑)？」
「ん…」
和也は黙ってコーヒーを飲みながら。
私は舞い落ちる花びらを眺めながら。
時間は、静かに過ぎていく。
なんだろう…
まるで、世界に私たちだけしか居ないみたい。
ふと…
言葉だけじゃ上手く伝えられない想いが込み上げてきて…
切なさと愛しさの狭間で和也の体温を感じたくてたまらなくなって。
舞い散る桜を眺めながら、和也の肩に頭をこてんと預け…
それから、そっと目を閉じる。
すぐ傍で、ふはっと小さく笑みを含んだ吐息が聞こえてきた。
ああ、これだけでいい。
こんな穏やかな時間が続いてくれたら、私は何も要らないよ。
変だね。
悲しくないのに、泣きたくなってきた。
＋＋＋
大切なものが何なのか。
本当に守らなきゃいけないものは何なのか。
いいよ。ゆっくりでいい。
この幸せな時間を一緒に過ごすことができたら、それでいいって心の底からそう思う。
「…さ、そろそろ行くか！」
「うん」
険しい道を通って先に辿り着いた先輩さんが、私たちのことを気に掛けてくれている。
私の存在を知りながら、信頼に応えて堅く口を閉ざしてくれている後輩さんたちもいる。
そして、メンバーさんたちも――。
たくさんの人たちから温かい力を少しずつもらって、こうして私たちは一緒に居られるんだ…と、今の私はそう思うから。
ちゃんとわかってるよ。
ここに在る一番大切なもの。
これを見失わなければ、私たちはきっと大丈夫。
先のことなんて何も見えない。
でも、未来は、きっとある。
私たちがこの手を離さない限り。
あれから５年経った今でも、それは変わらなくて。
そして、多分これからも。
そうだね。
私たちのペースで、今を確かめながら歩いていけたら、それでいい。
「…ほら！」
一足先にテラスから下にひょいと飛び下りた和也が、私を振り向いて左手を伸ばす。
「うん！」
怖くない。
怖いものなんてない。
和也がいれば、何も怖くないよ。
だから――。
私は、その左手をしっかりと握って、愛しい人の胸へとジャンプした。
＋＋＋
『愛の在処』end.
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kico(プロフ) - ゆうきさん» 初めまして。自己満足で書いてきた勝手な妄想ですが楽しんで頂けたのなら嬉しいです。もう新しいお話は書きませんが、いつかどこかで何かのご縁があった時には♪どのお話にも愛だけは目いっぱい籠めて書いてきました。最期まで読んでくださってありがとうございました^^ (2020年10月12日 9時) (
レス) id: 890f6f329d (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - 初めて送ります…ウラつく読者デビューは、この作品でした。とても楽しく読ませて貰いました。もっと読みたいなあと言うのが正直な気持ちです。 (2020年10月9日 20時) (レス) id: 62321c58f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kico
| 作成日時：2016年3月26日 12時
