1.ジャミル様・ゴルタス様 ページ2
草原の真ん中。心地よい風が吹いてきて、私の短い髪が浮遊感で満たされる。頬に掛かった薄紫を右手で払い腕を組んで斜め上の空を見た。
『いいですねぇ…』
地上に足を着くのは久々だった。死神というのは普通の人間には見えない。特別な者__マギや金属器使い等の、一般人よりルフの加護が強い人には見えるけれど。あとは勿論、死んだ人とか。
私は親指と中指の摩擦で音を鳴らし、鎌を取り出す。
手入れを始める合図だ。
上着のポケットから刺繍入りの白いハンカチを取り出して、銀に輝く刃を丁寧に拭く。
『散歩してたら知らない所まで来ちゃったけど…まあいっか。よし、完成!』
より一層輝きを増した鎌を仕舞い、代わりに水晶玉を取り出した。
世界中の何処かで1人でも人間は命を炎に代えている。
きっと今日も仕事があるはずだ…そんなことを考えながら、淡く光る水晶に目を落とす。
『…ん、みっけ』
死神は人の運命も見落とすことが出来る。便利な能力だよね。
早速見つけた。
今から1時間後に命を落とす運命に出会う人を。
*
『第8迷宮、アモン……』
最悪だ。
相当厄介な所だった。
迷宮で亡くなる人の数といったら計り知れない。なので迷宮が出現した時の死神の忙しさといったら尋常じゃないくらいだ。
…嫌だぁ
死神はもう死んでいるから危機に会うことは無いんだけれど、迷宮って迷いやすいから嫌いだ。
実際に私、方向音痴だから。
唸り、頭を悩ませていたその時。
《ビアンカ!ビアンカ・リッパー!お前の考えはお見通しだぞ!》
『いやぁっ!?』
耳に怒声が鳴り響く。
イヤホンから聞こえてくるのは、耳が腐る程聞いた上司の声。…けど名前が思い出せない。
『誰ですっけ…』
《冥界社死神課の課長だ!》
『ああ、課長ですか!お疲れ様です』
《うん、お疲れー…じゃないよ!貴様、またサボろうとしたな?後輩に何を残すつもりだ!》
『よっノリツッコミ!』
《話の趣旨をずらすな!》
課長とは長い付き合いだし、こういうのは日常茶飯事に値する。課長いじりは面白いから好きだ。
あーだこーだ言い合った末、私は迷宮に出向くことに決定した。
なんでも、今回の報酬は高らしくって。
『よーし、頑張っちゃいますよー』
皆には聞こえない私の声が、広く青い空に響き渡った。
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←設定
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
革ベルト
ラッキーカラー
あずきいろ
ラッキーナンバー
8
ラッキーアルファベット
X
ラッキー方角
西 - この方角に福があるはずです
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした!
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藍冠 | 作成日時:2017年11月4日 16時