永瀬さん家の家庭教師

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(( 永瀬 side ))







先生「 はい 、始め 」







期末テストの日 。


Aが来んくなってから10日が
経とうとしていた 。




それもそのはず 、一週間ほど前に
あいつから 家庭教師辞めるっていう
電話があったわけで 。


そしておかんに「 あんた何したの！？」って
執拗なほど怒られ 。


何もしてへんって答えた 。

… まぁ 、嘘やけど 。






結局 、俺のことなんてただの
中学生のガキとしか思ってへんかったA 。


自分ばっかり同い年の彼氏がおって
俺は生徒でしかなくて 。


きっとそれ以上になることなんて
その可能性はほぼゼロに等しい 。






なんで俺はそれを期待したんや 。







ぼーっとシャーペンを動かす 。









廉「 …… 、 」









そのとき目に入った次の問題 。

点数配分の高そうな応用問題 。





…… これ 、この前Aとやったような 。





不思議なくらいスラスラ数式が出てきて
あっという間に解答が導き出される 。






… なんやねん 。


あいつ 、ほんまにちゃんと
勉強教えてくれてたんやん 。





Aと勉強した記憶が次々蘇ってくる 。






廉「 ……… 」







一気に押し寄せてくる寂しさと
心にぽっかり会いた穴 。



もう会うこともないんや 、せいせいするわ 、
なんて言うてんのは友達の前だけで 。






ほんまは



好きやねん 。






今更 、かもしれんけど 。






好きやのに 。






Aのあの態度から
年の差は埋められへん ってことを
嫌でも感じてしまった 。





それをわかってたから
今まで違うって言い聞かせてたんにな 。







廉「 ……… なんで辞めんねん 」







俺がイライラしてんのにAが向け続けた
あまりに無防備な笑顔 。

それにむかついて
思わず手が出てしまったあのとき 。





怯えるような目で俺を捉えたあいつ 。



抵抗ひとつ出来てへんし息も詰まってるし 。





しかも 辞めるって 、そんなん確定やん 。




… まだそういう経験がないってことやん 。




そんなつもりちゃうかったけど
あんな反応されたらどう考えてもそうやん 。





辞めんのは 怖なったからやろ？


なぁ 、中学生でもそんぐらい分かるよ 。






なんでや 。





なんでそんな惑わせるようなことしといて
居らんくなんねん 。









セットした髪は 、いつの間にか
またぐちゃぐちゃになっていた 。









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