・ ページ24
「もっ、もしかしてあなたが拓海くん…！？」
「は、はい…？」
いきなり声を上げてしまったせいか、知り合いなのかと驚く池谷さんの隣で拓海くんは不思議そうに首を傾げる。
「あ、あの…渉くんと、正丸峠で…」
思い出したまま考えもせず言葉が落ちてしまって、だからどうしたと自分自身で突っ込んだ脳内は余計言葉を迷う。
あろうことかどうやって話題を続けたらいいか分からない。本当にだからどうした。
「え。えと…あの、どうしてそれを」
「た、拓海、この子はAちゃんって言って、埼玉に住んでるんだ。180SXに乗ってて女の子なのに走り屋で…！」
戸惑う拓海くんを気にしてか、なんとか場を繋ごうと池谷さんが紹介へ移る。
初対面の人を戸惑わせてどうする…と猛省しながら頬をかいた。
「すみません。私、あのとき啓介くんと一緒にギャラリーしてたんです。…どこかで見た事あるな、と思って」
「あ、あぁ…！！啓介さんが、埼玉に行けばAに会えるかもしれないから楽しみだって話してて…もしかして…」
「そんなこと言ってくれてたんだ…！ふふ、啓介くんとはお友達なんです」
ようやく話題の膨らまし方を見つける私の隣で、池谷さんはさっきから青くなったりほっとしたり忙しい。
まるで私の交友関係を気にしている様で、こんな短時間のお話し会で友達作りが下手そうに見えたのかしら、と思う。
彼は何をそんなに気にしているのか確証がつかめぬまま、話しの流れでそのままバトルを見守ることになってしまった。
必死に話しかけてくれる池谷さんと、静かに行方を見守る拓海くん。
相槌を打ちながらも渉くんの事が気が気でない私というなんとも突飛な組み合わせに、最早誰かからツッコミをいれてほしいくらいだった。
一分一秒がどうしようもない程長く感じて、余りのレース展開に言葉を失う私達に対し拓海くんは凛としたまなざしでそれらを見守り続ける。
「拓海くんは、…このバトル、どう思う？」
お互いが限界でせめぎ合う刹那を、同じドライバーとしてどう感じ取っているのか私にはわからない。
でも彼はただ静かに、唇を開く。
「きっと、たった少しのこと、……一瞬で、結果は変わる様な気がします。」
その言葉の本質を知りたそうな池谷さんは余計に不安がり、私は探る事に精一杯だった。
先ほどにも増して、雨は響き渡る声を強めていく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 33人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
み(プロフ) - 啄木鳥さん» はじめまして、ｺﾒありがとうございます！沢山お褒め頂きとｯｯｯても嬉しいです!!拓海くんもかっこよくて素敵な子ですよね😍いつか拓海くんﾒｲﾝのお話も書けたらいいな〜と思っております。お優しい言葉の数々とても励みになります！啄木鳥様もご自愛ください！ (6月26日 8時) (
レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
啄木鳥(プロフ) - まだまだ書きたいこと沢山ありますが、感想欄が大変なことになってしまいそうなのでここらで失礼致します^^; (6月23日 0時) (レス) id: 6174efd67c (このIDを非表示/違反報告)
啄木鳥(プロフ) - 作者さんの文才溢れすぎてて、、元々拓海推しの人間ですが、この作品を拝見して渉推しになりつつあります、、、！！ほんとにほんとに素晴らしい作品ありがとうございます！！お体に気をつけて更新楽しみにしております！！ (6月23日 0時) (レス) id: 6174efd67c (このIDを非表示/違反報告)
啄木鳥(プロフ) - 最近頭文字Dにハマり 出して、楽しんで読ませて頂いてます！！ストーリーも原作に沿いつつ甘々要素もあり、とても幸福感で満たされております… (6月23日 0時) (レス) id: 6174efd67c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：み
| 作成日時：2023年3月15日 11時
