3話 ページ4
2時間ほどバタバタしていた船も落ち着き、時刻は夕方。朝から降り続いていた土砂降りの雨はすっかりあがり、人もまばらだが出ているようだった。
人気が少なくなった部屋の前で、一人暗い顔で俯いているエースは扉の開く音がした瞬間、目をかっ開いて船医であるマルコに詰め寄った。
「…あいつ無事だったか?!」
「……………ひとまず傷の手当は全部終わったよい。
肋4本と脚の骨2本の骨折と、それによる発熱、腕に6箇所の打撲、頭部からの大量出血に20箇所に及ぶ切り傷、それから頬に大きな裂傷……エースが少しでも助けるのが遅れてたら、こいつは死んじまってたかもしれねぇ。
にしてもこんな辺鄙な島で、何をどうしたらこんな怪我のオンパレードになるのか不思議で仕方ねぇよい……」
「…………もしかしなくても、あいつヤベェのか?」
「あぁ、かなりな」
どうやら彼女はエースが発見した時点でかなり深刻な状況下に置かれていたらしい。そんな彼女は今、いくつもの点滴に繋がれながらベッドで深い眠りについている。
「……………ところでエース、あれだけ口酸っぱく言ってやったのにそれを破るたァいい度胸してんじゃねぇか」
「あっ!!……センリャクテキテッタイだ!!!」
「逃げんじゃねぇよい!!本当なら雨が止んでも上陸はさせてやらねぇつもりだったが………今回は仕方ねぇ、一人の命を救ったんだ、お咎めはなしにしてやる」
「本当か?!って喜んじゃいけねぇな………」
「よく分かってんじゃねぇか」
戦略的撤退は分からずとも、今喜んではいけない空気だと分かる男、ポートガス・D・エース。5億の男は空気ぐらい読めるのである。
「ひとまずおれはオヤジに報告してくるから、その間はお前があの子の側にいてやれよい。流石に今日はねぇと思うが……もし目を覚ましたら困るしな」
そうしてマルコは部屋を後にして、扉を閉めた。
「(にしてもこいつ……綺麗な顔してんなぁ)」
その考えに下心や恋慕なんて全くなかった。ただ単に美しい、痛々しい包帯と点滴がある以外はまるで宗教画のような、そんな美しさだった。
「…………早く起きて、おれと話そうぜ。」
どこから来たかも知らない少女に、男はそう語りかけた。
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ミクリ - え?もしかして五条さん呪詛師になっちゃった??マジか!妹ちゃんが亡くなったのが原因か…もしかして五条さん(兄)もワンピースの世界に飛ぶんですかね? (8月14日 21時) (レス) id: a55a9cd9ea (このIDを非表示/違反報告)
にの - 12話の最後で「えっ…?」て声が出てしまいました。これからも楽しみにしてます! (2022年10月16日 21時) (レス) @page14 id: 11a3c31381 (このIDを非表示/違反報告)
ミーコ(プロフ) - 面白かったです。一気読みしました!戦闘シーンが楽しみです。この先どうなるのか気になりますね。続き楽しみにしています! (2022年10月3日 17時) (レス) id: b974f3c01e (このIDを非表示/違反報告)
kaname(プロフ) - 面白くて一気に読みました…!更新楽しみにしてます!! (2022年8月29日 22時) (レス) @page10 id: 7565f8d7cb (このIDを非表示/違反報告)
うに - 求めていたものがここにあった...!!すきです!!!!! (2022年8月24日 18時) (レス) @page10 id: df676e7219 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鯖の塩焼き | 作成日時:2022年3月29日 16時