1話 ページ2
私は今間違いなくチャリを押して、駅前の商店街を帰っていたはずだ。友達と遊んだ帰りだったから時間は多分6時ぐらい。肉屋さんから香る揚げたてコロッケのいい匂いに誘惑されないように耐えながら帰っていたにもかかわらず、なんで私は来たこともない夜の森にいるんだろうか。
ここに来てしまったのは確か日が落ちる前だった。森を抜けるとか遭難(?)状態だからここで待機して人を待つとか色々考えていたのだが、あまりにも突然すぎて何がどうなってるのか全く整理出来ず、その場で立ち止まっていたらいつの間にか夜になっていた。
『どうしよう………』
さっきからもう30回は言っているであろう言葉。もう夏も近いというのに夜の森は案外冷えるらしく、手と膝から下の素足が段々と冷えてきた。寒いしお腹すいたし、もう限界。このまま野垂れ死ぬかもしれないと涙が出てきそうになったとき、人の気配がした。神様はいたんだ…!!
『おっ、おおお願いします助けてください!!!』
「へっ!?!!」
『あの、商店街歩いてたら急に、ひっ、ここに来ててっ、出ようとしたんですけど、暗くて、何もわかんなくて、』
急に初対面の人に泣いて助けを求めるなんてどうかしてる。人を見つけた瞬間、安心したのか知らないけど涙が止まらなくなって、言葉も支離滅裂になってしまう。
「……とりあえず、安全なところまで案内します……」
気まずそうに目を逸らすのを見て、ふと冷静になる。目の前にあるのは明らかに男の人の、胸板で………
『ああああああっごめんなさい!!!!私ったらなんてことをををっ!!!』
「大丈夫です!!大丈夫なんで…!!何があったのか、聞かせてもらえますか?」
よく見てみるとその人は今では珍しい、というか見かけない、まるで映画村にいそうな服を着ていて、髪の毛は長い。後ろで高くとめてあるのにかなりの長さだった。毛先が丸くて……
ってあれ?考えたら声もどこかで聞いたことあるような……
「あの…?お〜い……」
月夜に照らされた彼の顔は、毎日夕方から放送しているあのご長寿アニメに出てくる先輩キャラクター、尾浜勘右衛門にそっくりだった。
なんかもう色々情報を処理しきれなくて、私はそのまま意識を失った。
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凛(プロフ) - 続き楽しみに待ってます! (4月3日 22時) (レス) @page6 id: f020fc6e38 (このIDを非表示/違反報告)
ローズ🌹 - 面白いし好きです (3月28日 18時) (レス) id: f00e066842 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鯖の塩焼き | 作成日時:2024年3月20日 22時