【男主】童磨が子供を拾った？ようです【鬼滅短編集】

きざむ (童磨) ページ27

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静まり返った夜の部屋。ガリガリと猫が爪を研ぐような音が響く。


｢おっ、また伸びたねA！｣


尺(ものさし)なんてものはないから、扇でAの頭を優しく押さえ、爪で柱に傷を付ける。

これはAの成長記録。
信者同士、自分の子供の話をしていたのがたまたま耳に入った。二人の話では、家の柱に身長を刻んで子供の成長記録を付けるんだとか。
単純に面白そうだ、と思った。半鬼のAの身長が伸びるかは分からなかったけれど。

初めて柱に身長を刻んだのは、今から半月前。
｢明日もつける！｣って言って聞かないAに｢そんなすぐ伸びないよ｣って笑って俺は頭を撫でたっけ。

そしてそれから2週間。Aは猗窩座殿と出会い、少しずつ鍛錬をするようになった。
血を飲む回数も眠る回数も増えたAの身長は、ほんの少しだけど確実に伸びていた。
その度に柱に刻む。ほんの少しずつだが、高さの上がっていく傷にAは大喜び。


｢次はもっとおっきくなる！｣

｢Aはどれくらい大きくなれるかな？楽しみだね｣



そして今日。


｢どう？大きくなってる？｣

｢おっ、また伸びたねA！｣


三寸も伸びていた。血と睡眠でこんなに成長出来るものなの……？


｢A、人間食べられるようになった？｣


まさかと思って聞いてみたけどAは物凄く顔をしかめて首をぶんぶん横に振った。


｢ぐちゃぐちゃしててきらい……｣

｢だから食べられなかったんだね！？｣


背が一気に伸びたのも驚いたけれど、首を横に振った理由にも驚く。成程、これは工夫次第で食べられるようになるかもしれない。
焼く？茹でる？とか考えていたら、Aに着物の裾を引っ張られた。


｢童磨さまも身長、つけよ！｣


ほらほら、とAが立っていた場所に引っ張られた俺はされるがままそこに立つ。
でも、Aの背じゃ届かないし、踏み台もここにはない。
俺はAを抱き上げようかと手を伸ばして、すぐその手を降ろすことになる。


｢できた！童磨さま、じっとしててね｣


氷のツタで足場を作り、軽やかに登るA。頭にひんやりとした感覚を感じて思わず見上げると、Aは薄い氷の板を持っていた。

｢あ！動いちゃだめ！｣

｢ごめんごめん、びっくりしてつい｣

静まり返った夜の部屋、響くのはカリカリと子猫が爪を研ぐような音。
これからは、俺とAの成長記録だね。なんて笑ってAを抱いて、俺が付けるより薄い柱の傷を指でなぞった。

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