【鬼滅の刃】あなたを愛した時間 2【煉獄杏寿郎】

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杏寿郎さんが息を呑むような気配がした。
やがて、杏寿郎さんは「もう決めたことなんだな」と私の意思を確かめるように口にする。
その言葉に私は小さく頷いた。

「理由を聞いたりはしないんですね」
「君が悩んで決めたことなんだろう。それで後悔がないというなら、俺は君の意思を尊重したい」

杏寿郎さんならそう言うと思っていた。
もちろん、杏寿郎さんの本音を知っているから抜けることを止めるとは思わないが、たとえこのまま鬼殺隊にい続けても杏寿郎さんは同じように尊重してくれただろう。
杏寿郎さん自身の本音を押し殺してでも。

本当は、後悔が少しもないなんてことはなかった。
やり残したことは沢山あるし、これからやりたいと思うことも沢山あった。
だけど、それを投げ捨ててまで選びたいと思うものが今の私にはある。
それは、杏寿郎さんの想いだ。
私にとって何よりも大切な杏寿郎さんの信念を、私は継ぐことができない。
私が好きな人のために出来ることなんて、これぐらいしかないだろう。

「自分で決めたことです。後悔したとしても、責任は自分で取ります」
「……そうか。しかし、君が俺の継子でなくなったとしても、俺と君の関係は変わらん。いつだって君を想っているからな！」
「はい」

そうして、私は鬼殺隊から抜けることになった。

結局こうなってしまったことを宇髄さんはどう思ったのか、特に追及されることはなかったけれど、彼は「まぁ、お前らの問題だしな」なんて笑っていた。
蜜璃さんは、この前のことがあったからとうとう結婚だと思ったらしく、これでもかというほど盛り上げられたのだけれど、私が誤解を解くと残念そうな顔をしていた。
彼女は「寂しいけれど、また一緒にお喋りしましょうね！」なんて言って、近々会う約束を交わした。
しのぶさんも私の決断に「煉獄さんを支えることも結果的には隊のためになりますからね」と言って笑っていた。

そして、お館様にも挨拶に伺った。

「このような形で鬼殺隊から去ることになってしまい、本当に申し訳ありません」
「いいんだよ、結婚を理由に脱隊する剣士はそう珍しくないのだから」
「あ、いや…結婚が決まった訳ではありませんが」

私がそう言うと、お館様は緩やかな笑みを浮かべて「どちらにしてもAには感謝しているんだ」と言った。

「まずは、今日まで命を賭けて戦ってくれたこと、本当にありがとう」

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