番外編 約束.1 ページ31
「Aさ〜ん！」
私の名前を呼ぶ元気な声に顔を上げる。
猫の千代丸さんが、ごろごろと喉を鳴らした。
「お久しぶりです、炭治郎くん」
初めて私を訪ねて来てくれた時よりも、ずっと逞しくなった顔つきの青年が笑う。
炭治郎くんの隣には、禰豆子さんが立っていた。
「禰豆子さんも、お久しぶりです」
「はい、ご無沙汰してます」
そう言って、禰豆子さんは可愛らしい笑顔を浮かべた。
あれから、大きな犠牲を払いながらも鬼舞辻無惨は討伐され、禰豆子さんも人間に戻ることができた。
そして、いくつもの季節が巡った今となっても私は、鬼殺隊だった皆さんと繋がり続けている。
特に、炭治郎くんは熱心に文通を続けていてくれて、いつからかそこに禰豆子さんも一筆加えてくれるようになった。
杏寿郎さんのことを知っていて、覚えていてくれる人が身近にいることは、私にとってすごく嬉しいことだった。
そんな文通を続けていく中で、いくつもの杏寿郎さんとの思い出話をした。
そこには、私が知っている杏寿郎さんのお話、炭治郎くんしか知らない杏寿郎さんのお話、色々なお話をする中で、私はあることを炭治郎くんに明かした。
「すみません、わざわざお迎えに来て頂いて…」
「いえ！むしろ俺たちも一緒に行って良かったんですか？」
「もちろんです、私一人では勝手が分からないので…お恥ずかしい限りです」
私は千代丸さんを自宅に連れ戻すと、玄関口に用意してあった荷物を持って炭治郎くん達と一緒に歩き始めた。
「炭治郎くん達はお山育ちでしたっけ？」
「そうなんです、私とお兄ちゃんは今も山に住んでいて……Aさんも是非遊びに来てください！」
「本当ですか？是非、伺わせてください」
普段、文通をしているとは言え、やはり直接お話しする方がずっと楽しいと改めて実感した。
鬼殺隊が解体してからは、私も一人で過ごす時間が多くて、じんわりとした寂しさを感じることもあった。
それでも、鬼舞辻無惨がいなくなったこの世界は、理不尽な恐怖に脅かされることなく、今日も穏やかに続いている。
それに、たまに村田さんが来てくれることがあったりする。
あとは、宇髄さん一家が訪ねてくることもあったし、槇寿郎さんからお手紙が届くこともある。
残された者同士、故人を懐かしむこともあって、それから未来を語ることもあって。
失ってしまったものは元には戻らないけれど、新しく生まれてくる何かもあるのだと、私は信じている。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ティカさん» はじめまして、お読み頂きありがとうございました。数ある作品の中から、ティカさんの中で1番だと思って頂けたことが本当に光栄です。これから先、更に心に響くものが書けるようより一層精進して参りたいと思います。コメントありがとうございました！ (2021年3月4日 18時) (
レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
ティカ(プロフ) - あなたの小説とても大好きです！！これからもがんばってください！！応援してます！！！！！ (2021年3月4日 1時) (レス) id: 0c31e8c5ec (このIDを非表示/違反報告)
ティカ(プロフ) - コメント失礼します。今回、ましろさんの作品を初めて読まさせていただきました。時間も忘れて夢中になって読んでしまいました...。とても感動するもので、今まで読んだ夢小説の中で一番好きです！最後の方は涙が止まりませんでした(T-T) (2021年3月4日 1時) (レス) id: 0c31e8c5ec (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 羽っこ。さん» 失ってしまったものは元に戻らないですが、人生はこれからも続いていくので、生き続けて欲しいという願いで書きました。上手く汲み取って下さり、ありがとうございます！コメントありがとうございました！ (2021年2月10日 10時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
羽っこ。(プロフ) - コメント失礼します！番外編読みました…！凄く感動しました。本編もそうですがその夢主ちゃんの強く生きていこうとする様子に心打たれました。切ないながらも希望に満ちている感じが凄く好きです！(^-^) (2021年2月9日 22時) (レス) id: 14df97ccd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月ヶ瀬ましろ | 作成日時：2020年12月31日 15時
