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「小鉄少年！」
刀鍛冶の里に訪れたときのことだった。
煉獄は、手先が器用なその少年に「君に頼みがあるんだ！」とその手を取る。
小鉄は煉獄の話を聞き「それなら前にも作ったことがあるので、すぐに作れますけど…」と呟いた。
「でも、一体何に使うつもりですか？」
「いやなに、どうしてもそこに入れておきたいものがあってだな！」
「何を入れるんですか？」
思っていた以上に興味を示した小鉄に、煉獄は苦笑する。
「それは秘密だ」
「えぇーーー！！制作者にぐらいは教えてくださいよ！教えてくれないなら作りませんよ？」
「よもや！」
食い下がり続ける小鉄がヘソを曲げないうちに、煉獄はそっと耳打ちをした。
すると、小鉄は「それ中身に気付いてもらえなかったら、煉獄さんは一生独り身になっちゃいますよ」と毒吐く。
その言葉に煉獄は「その時はやむなしだな！」と笑った。
「しかし、それならそれでいい！これは俺の一方的な我儘だからな！」
そう言って、煉獄は懐にある紙袋に触れた。
町中で見かけた己の花をあしらった簪に運命的なものを感じた。
もしも、これを彼女に渡す日が来るのであれば、それは煉獄が鬼殺をやめたときか、あるいは鬼がこの世からいなくなったときだろう。
出来れば後者であって欲しい、煉獄はそう願っている。
「では、出立の時までに作っておいてもらえると助かる！」
そう言って、煉獄はその場から立ち去った。
もしも、あの箱が開けられるときに自分がこの世からいなくなっていたとしたら。
そんなもしもの話は考えたくなかったが、十分あり得る話だった。
忘れてもいい、そんなのは建前だ。
本当は、忘れないで欲しい。
共に過ごした日々も、想い合ったその気持ちも。
思い出に縛り付けたくがない故に、言えなかった言葉だ。
だから煉獄は、その想いを簪に託した。
今も彼女の傍で、杏の花は揺れ続けている。
完
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ティカさん» はじめまして、お読み頂きありがとうございました。数ある作品の中から、ティカさんの中で1番だと思って頂けたことが本当に光栄です。これから先、更に心に響くものが書けるようより一層精進して参りたいと思います。コメントありがとうございました！ (2021年3月4日 18時) (
レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
ティカ(プロフ) - あなたの小説とても大好きです！！これからもがんばってください！！応援してます！！！！！ (2021年3月4日 1時) (レス) id: 0c31e8c5ec (このIDを非表示/違反報告)
ティカ(プロフ) - コメント失礼します。今回、ましろさんの作品を初めて読まさせていただきました。時間も忘れて夢中になって読んでしまいました...。とても感動するもので、今まで読んだ夢小説の中で一番好きです！最後の方は涙が止まりませんでした(T-T) (2021年3月4日 1時) (レス) id: 0c31e8c5ec (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 羽っこ。さん» 失ってしまったものは元に戻らないですが、人生はこれからも続いていくので、生き続けて欲しいという願いで書きました。上手く汲み取って下さり、ありがとうございます！コメントありがとうございました！ (2021年2月10日 10時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
羽っこ。(プロフ) - コメント失礼します！番外編読みました…！凄く感動しました。本編もそうですがその夢主ちゃんの強く生きていこうとする様子に心打たれました。切ないながらも希望に満ちている感じが凄く好きです！(^-^) (2021年2月9日 22時) (レス) id: 14df97ccd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月ヶ瀬ましろ | 作成日時：2020年12月31日 15時
