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その木箱はとてもハイカラな模様で、風変わりなものだった。
Aさんは紙を机上に広げると、そこに書かれている通りに木箱の模様を動かしていく。
何度も何度もそれを繰り返している内に、木箱は音を立てて開いた。
「……。」
箱の中には「遺書」と書かれた紙が入っていた。
きっとそれは、煉獄さんが書いたものなのだろう。
俺は、膝の上で握っていた拳をぎゅっと握り直した。
「席を外した方が良ければ……」
「いえ…大丈夫です。少し、驚きましたが……私もきちんと受け止めようと思います」
Aさんはそう言うと、意を決したように遺書を開いた。
＊＊＊
寄木細工の秘密箱、それはいつだったか杏寿郎さんが任務先からのお土産だと言って私にくれたものだった。
中に何かが入っていることは知っていたが、杏寿郎さんは開け方を忘れてしまったと言っていたし、しのぶさんも自分が持っているものとは開け方が違うと言っていた。
だから、これは一生開けられないものだと思っていたし、中に入っているものの意味を考えたこともなかった。
あの時、杏寿郎さんが「箱を壊してみるか？」と取り出すことを提案してくれたから、開け方が分からないということは嘘なんかではなく、本当だと思っていたのに。
しのぶさんが私にくれた紙には箱の開け方と、そして「煉獄さんはその箱の中に本当に渡したかったものを入れているのではないでしょうか」ということが書かれていた。
私も鬼殺隊の隊士だった頃に、遺書を書いてお館様に預けていた。
鬼殺隊の隊士なら皆そうしている。
だから、特定の誰かに遺書を読ませたいときは、お館様に託すことにしていた。
誰もが、そうしていたはずだった。
それなのに、杏寿郎さんは私の一番近くにあって、絶対に取り出すことが出来ない場所にそれを隠していた。
何故そんなことを、と思いもする。
そして、読むことに対する恐怖もある。
わざわざ、下手をすると一生誰にも読まれることなく終わるかもしれなかったところに隠した杏寿郎さんの考えが分からない。
一体どんなことをここに書いていたのだろうか。
私は、本当にそれを読んでも良いのだろうか。
「席を外した方が良ければ……」
躊躇いがちにかけられた声で我に返った。
目の前では竈門さんが緊張した面持ちで、遺書に目を向けていた。
正直、これを一人で読む勇気はなかった。
「いえ…大丈夫です。少し、驚きましたが……私もきちんと受け止めようと思います」
覚悟を決め、遺書を開いた。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ティカさん» はじめまして、お読み頂きありがとうございました。数ある作品の中から、ティカさんの中で1番だと思って頂けたことが本当に光栄です。これから先、更に心に響くものが書けるようより一層精進して参りたいと思います。コメントありがとうございました！ (2021年3月4日 18時) (
レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
ティカ(プロフ) - あなたの小説とても大好きです！！これからもがんばってください！！応援してます！！！！！ (2021年3月4日 1時) (レス) id: 0c31e8c5ec (このIDを非表示/違反報告)
ティカ(プロフ) - コメント失礼します。今回、ましろさんの作品を初めて読まさせていただきました。時間も忘れて夢中になって読んでしまいました...。とても感動するもので、今まで読んだ夢小説の中で一番好きです！最後の方は涙が止まりませんでした(T-T) (2021年3月4日 1時) (レス) id: 0c31e8c5ec (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 羽っこ。さん» 失ってしまったものは元に戻らないですが、人生はこれからも続いていくので、生き続けて欲しいという願いで書きました。上手く汲み取って下さり、ありがとうございます！コメントありがとうございました！ (2021年2月10日 10時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
羽っこ。(プロフ) - コメント失礼します！番外編読みました…！凄く感動しました。本編もそうですがその夢主ちゃんの強く生きていこうとする様子に心打たれました。切ないながらも希望に満ちている感じが凄く好きです！(^-^) (2021年2月9日 22時) (レス) id: 14df97ccd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月ヶ瀬ましろ | 作成日時：2020年12月31日 15時
