49 ページ3
翌朝、私は杏寿郎さんに会いに行くことにした。
身支度を整えて戸締りを確認していると、玄関の方から「嬢ちゃんいるかー？」と大きな声が聞こえた。
来客の予定はなかったはずだったので、不思議に思いつつ玄関の引き戸を開ける。
そこには、宇髄さんの姿があった。
「よォ、朝早くから悪ぃな」
「いえ、昨晩はありがとうございました」
昨日は杏寿郎さんの成人祝いということで、柱の皆さんと食事をご一緒した。
泥酔した杏寿郎さんを宇髄さんと悲鳴嶼さんが送り届けてくれたため、後で二人にはお礼に伺おうと考えていたところだ。
私が頭を下げると、宇髄さんは「構わねぇよ」と言って笑った。
「杏寿郎さんは大丈夫でしたか？」
「あぁ、念のため泊まったが寝て起きたらすっかり元気になった。だから心配すんな」
「そうでしたか…！」
その言葉を聞いて、ほっと胸を撫で下ろす。
昨日の別れ際は、真っ直ぐ歩くこともままならないように見えたから、酔いが抜けたのなら良かった。
安堵する私を見下ろしていた宇髄さんは「嬢ちゃんは本当に煉獄が好きなんだな」と呟く。
弾かれるように顔を上げると、宇髄さんの表情はどこか暗いように見えた。
「宇髄さん…？」
「いや、昨日はあんな空気になっちまったから……一晩、悩んだりしたんじゃねぇかと思ってな」
「そう…ですね……」
あの後、しのぶさんと話をして改めて色々なことを考えた。
家に帰ってからも考え続けて、それでもこれといった答えは出なくて、結局あまり眠れなかった。
「でも、杏寿郎さんが私のことを思ってくれているのは分かりましたし……私も自分の気持ちを伝えるべきかと思って」
「そうか…」
今はまだ確かな答えは出せないけれど、杏寿郎さんと話がしたいと思ったのだ。
「そういえば、宇髄さんは何か用があったんですか？」
今まで宇髄さんとはほとんど面識がなかったから、こうやって自宅まで訪ねてくることも当然初めてのことだった。
私が尋ねると、宇髄さんは「あー…」と歯切れの悪い返事をしたため、私は首を傾げる。
「いや…な。煉獄なんだけどよ、昨日のことはほとんど覚えてねぇんだわ」
「え…」
「相当酔ってたからなァ……嬢ちゃんのこと褒めちぎってたことぐらいは覚えてるみてぇだが、それ以降はさっぱり記憶にねぇらしくてな」
宇髄さんの言葉に私は口を閉ざす。
私はてっきり覚えてるとばかり思っていたため、愕然としてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 94人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ティカさん» はじめまして、お読み頂きありがとうございました。数ある作品の中から、ティカさんの中で1番だと思って頂けたことが本当に光栄です。これから先、更に心に響くものが書けるようより一層精進して参りたいと思います。コメントありがとうございました！ (2021年3月4日 18時) (
レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
ティカ(プロフ) - あなたの小説とても大好きです！！これからもがんばってください！！応援してます！！！！！ (2021年3月4日 1時) (レス) id: 0c31e8c5ec (このIDを非表示/違反報告)
ティカ(プロフ) - コメント失礼します。今回、ましろさんの作品を初めて読まさせていただきました。時間も忘れて夢中になって読んでしまいました...。とても感動するもので、今まで読んだ夢小説の中で一番好きです！最後の方は涙が止まりませんでした(T-T) (2021年3月4日 1時) (レス) id: 0c31e8c5ec (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 羽っこ。さん» 失ってしまったものは元に戻らないですが、人生はこれからも続いていくので、生き続けて欲しいという願いで書きました。上手く汲み取って下さり、ありがとうございます！コメントありがとうございました！ (2021年2月10日 10時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
羽っこ。(プロフ) - コメント失礼します！番外編読みました…！凄く感動しました。本編もそうですがその夢主ちゃんの強く生きていこうとする様子に心打たれました。切ないながらも希望に満ちている感じが凄く好きです！(^-^) (2021年2月9日 22時) (レス) id: 14df97ccd2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月ヶ瀬ましろ | 作成日時：2020年12月31日 15時
