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「会いに行って欲しい人がいるんです」

そう、千寿郎くんに言われたのは煉獄さんからの遺言を伝えに行った日のことだった。
あのとき、無理をしてまで蝶屋敷から煉獄さんの生家へと向かった俺をしのぶさんはこれでもかと言うほど叱った。
それは、俺も無理をしてしまったと反省しているけど、後悔はしていない。
あの時、俺や200人の乗客を守ったあの人の想いをいち早く伝えたかった。

それから、俺は回復するまで蝶屋敷でお世話になった。
沢山の人に心配されたし、迷惑もかけたけれど、ようやく戦いに挑むのにも支障がないぐらいに回復した頃、俺はまたしてもしのぶさんに呼び出された。

「君にお願いがあります」

しのぶさんは、俺が訪ねて早々に話を切り出した。
どうやら、しのぶさんは俺が千寿郎くんに会いに行くよう頼まれた相手と知り合いだったようで、傍から紙を取り出すと「これを渡して欲しくて」と言った。

「もしかすると、余計なお世話かもしれませんが…私に出来ることはこれぐらいだと思いますから」
「わかりました。責任を持って届けたいと思います」
「はい、よろしくお願いしますね」

そう言ったしのぶさんは、少しだけ悲しそうな顔をしていた。

そうして、俺はしのぶさんから預かった紙と千寿郎くんから預かったものを持って、AAさんという女性の元へ向かった。
その女性は藤の家の主らしく、たどり着くまでは煉獄さんの鎹鴉が案内してくれた。
俺は今から会いにいく女性は煉獄さんと深い関係だったのだろう、とうっすらと感じ取っていた。
やがて藤の家にたどり着き、煉獄さんの鴉は飛び立って行った。

門の前で1人の女性が、猫の頭を撫でている。

「あの……AAさんでしょうか?」

俺の声に女性が顔を上げる。
ほんの少し、その顔は元気がないように見えたけれど「そうですが…」と返事はしてくれた。

「俺は、竈門炭治郎と言って……今日はAさんに届けたいものがあって来ました」
「竈門…炭治郎さん………」

俺の顔を見ながら名前を呟くと、女性は猫を抱えて立ち上がった。

「大したおもてなしは出来ませんが、上がっていってください」

そう言って女性は僅かに微笑む。
その表情は、ほんの少しだけ煉獄さんの笑った顔と似ているような気がして、俺は胸が詰まるような気持ちになった。
それでも、俺は逃げ出すことなく彼女の後に続いて門の中へ足を踏み入れた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎   
作品ジャンル:恋愛
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - ティカさん» はじめまして、お読み頂きありがとうございました。数ある作品の中から、ティカさんの中で1番だと思って頂けたことが本当に光栄です。これから先、更に心に響くものが書けるようより一層精進して参りたいと思います。コメントありがとうございました! (2021年3月4日 18時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
ティカ(プロフ) - あなたの小説とても大好きです!!これからもがんばってください!!応援してます!!!!! (2021年3月4日 1時) (レス) id: 0c31e8c5ec (このIDを非表示/違反報告)
ティカ(プロフ) - コメント失礼します。今回、ましろさんの作品を初めて読まさせていただきました。時間も忘れて夢中になって読んでしまいました...。とても感動するもので、今まで読んだ夢小説の中で一番好きです!最後の方は涙が止まりませんでした(T-T) (2021年3月4日 1時) (レス) id: 0c31e8c5ec (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 羽っこ。さん» 失ってしまったものは元に戻らないですが、人生はこれからも続いていくので、生き続けて欲しいという願いで書きました。上手く汲み取って下さり、ありがとうございます!コメントありがとうございました! (2021年2月10日 10時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
羽っこ。(プロフ) - コメント失礼します!番外編読みました…!凄く感動しました。本編もそうですがその夢主ちゃんの強く生きていこうとする様子に心打たれました。切ないながらも希望に満ちている感じが凄く好きです!(^-^) (2021年2月9日 22時) (レス) id: 14df97ccd2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2020年12月31日 15時

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