第30話 夏の計画 ページ30
季節は過ぎて、キメツ学園の前の道沿いの桜もすっかりと葉桜へ色を変えていた。
セミの鳴き声も日中鳴り止まないほど、本格的な夏が迫ってきているのが分かる。
「──屋台?」
「あァ、毎年のように今度の夏祭りでうちからもいくつか屋台を出すんだが」
お嬢みたいな若い奴らは何を好むのか分かんねェよ、と自分も21歳という若さにも関わらず、眉間にシワを寄せる私の専属護衛。
いつもの如く、実弥の部屋のソファで寝転んでいるAは、うちわで自身の顔を扇ぎながら、スマホを眺めている行動を止めて起き上がった。
「ん〜、去年の焼きそばは割と好評だったっぽいけどな…。あ、あと射的とかくじ引きとか!景品にゲーム機貰ってて喜んでた子居たよ!」
「ほォ…まあそんなもんかじゃあそれで」
「ねえ絶対考えるの面倒臭いんでしょ、返事がすごく適当」
「あァ?こんなモン俺に任せる奴が悪ィ」
ニコチンが足りていないのか。はたまたこの蒸し暑さのせいなのか。
実弥は雑にパソコンを叩きながらイライラしているのが分かる。
その様子にも長年の付き合いで慣れているAは、ソファから立ち上がって実弥の座る仕事机の隣まで行き、うちわで彼の邪魔をしないようにパタパタと扇ぎ始めた。
「仕事進まないんだったらちょっとは休憩した方がいいよ、おはぎアイス食べる?美味しいよ?」
「ほんとにうめェのかそれ」
「うん、小豆バーみたいな感じ」
取ってこようか?なんて言いながら小首を傾げて実弥を見下ろす彼女は、小動物みたいでなんだか可愛い。
実弥は黒縁のパソコン用の眼鏡をかけている目で、健気に取りに行こうとするAをチラッと見ては、「お嬢、」と呼び止めた。
「…ん?なに?」
「や、ちょっとこっち」
来いとは言わんばかりに軽く手招きされ、頭に疑問符を浮かべた私は躊躇なく実弥の元へ再び戻る。
「なになに、まだ屋台の事悩んでん…の、」
そう言った拍子だった。
ふと手を引っ張られ、その勢いで座っている実弥に倒れかかってしまい、ぶつかるその寸前で彼の肩と背もたれを支えに耐えた。
「…っぶな…!!急に何すんの!」
「いやァ…こっちの方が充電出来るかと思って」
「は…?」
顔をしかめる私を他所に、私の腰に手が回り、その胸元に顔を埋めて実弥は深呼吸をする。
「…お嬢の匂いが、1番落ち着くわァ」
「…っ?!」
暑さのせいでちゃんと回らない頭でやってしまったこの行動、実弥は後で十分に悔やむことになる。
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つきこ(プロフ) - りついちさん» 楽しんで頂けているようで嬉しいです(;_;)頑張って更新していきます!ありがとうございます^^* (2020年4月13日 20時) (レス) id: 1520dc3908 (このIDを非表示/違反報告)
りついち - めちゃめちゃ面白いです…!!更新頑張ってください!!楽しみにしてます!! (2020年4月12日 23時) (レス) id: 9c40eb9251 (このIDを非表示/違反報告)
つきこ(プロフ) - 零華さん» 遂に手出しましたね…!相手が未成年なのでかなりやばいですね笑 もっといちゃつかせたいです… (2020年4月12日 17時) (レス) id: 1520dc3908 (このIDを非表示/違反報告)
つきこ(プロフ) - うぐいすのしっぽさん» 楽しんで読んでいただき何よりです笑 ありがとうございます(^^) (2020年4月12日 17時) (レス) id: 1520dc3908 (このIDを非表示/違反報告)
零華 - お!ついにさねみん手を出した!!サツの出番かな?(いいぞもっとやれ!!) (2020年4月12日 15時) (レス) id: f56491ae0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つきこ | 作成日時:2020年4月7日 13時