第27話 煙草の香り ページ27
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「…俺がお前を見捨てて消えるわけねェだろ」
いつものぶっきらぼうな実弥の声が、ただ真っ直ぐに
わたしの心に落ちる。
「…悪かった、…虐めすぎた」
「ほんと…全くだよもう…怖すぎたんだけど」
「うるせえ」
私も自然と彼の背に手を回す。
変な距離感だなあ。事実上、恋人でもなんでもない、でも、お兄ちゃんと言うほど兄妹らしい感じでもない。
どきどきするけど、安心もする。
怖いけれど、嫌いにはなれない。
「…変なの」
「あ?」
「んーん、ねえ…また、実弥の昔話、聞かせてよ」
「…なんも面白くねェぞ」
「大丈夫、いつもだいたい実弥の話面白くないから…」
「お前まだ喧嘩してェのか…?」
「ひいっ?!あ、あれ〜口に出ちゃってたかなぁ〜…」
それから、何事も無かったかのように乱された服を整え、賑やかな客間へと戻った。
実弥は少し煙草を吸ってからすぐ戻ってくるそうで、それまでどこか邪魔にならないところで座って待ってよう…と考えた私は縁側の方へと向かう。
ふと、すれ違いざまに、客間に上がる前に話していた宇随と目が合った。なんだろう。
何か言いたげにこちらへと向かってくる。
「…お前、喫煙所行ったか?」
「は…?」
「いや…お前の身体からほんの少しだけ煙草の匂いがすんだけど気のせいか…?」
「…っ!!!」
顔に熱が集まる。
あ、あれ、実弥と喫煙所の前通ったからかなぁ〜?!気の所為なんじゃ…なんて慌てふためくAは、先程の光景を脳裏に思い出してしまい羞恥心に押しつぶされそうになった。
と、背後から追い討ちをかけるかのように実弥が現れ、にわかに信じ難いと言わんばかりの表情をした宇随は、実弥にまで鼻を近づける。
「あ゛?なんだ気色悪ィ真似しやがって」
「おいおいお前からは微かにこの嬢ちゃんの匂いがするぞォ?2人揃って派手に何してやがった」
「ハァァ?」
目を丸くしながら宇随とAを交互に見る実弥。
だが、次の瞬間なにかを思いついたかのように自身の口に弧を描いた。
「はァん…?知りてェかァ…?」
「え゛っ、ちょ、さ、実弥サン???」
ぐいっとAの肩をこれでもかというくらいに自分の胸板に寄せる。
静かな水面の如く目を光らせ、先程からこちらをチラチラと伺いつつ話を盗み聞きしているお姉様方を見やり。
そしてまた、屋敷に入った時からAの事をいやらしい目で見ていた男どもを見渡した。
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つきこ(プロフ) - りついちさん» 楽しんで頂けているようで嬉しいです(;_;)頑張って更新していきます!ありがとうございます^^* (2020年4月13日 20時) (レス) id: 1520dc3908 (このIDを非表示/違反報告)
りついち - めちゃめちゃ面白いです…!!更新頑張ってください!!楽しみにしてます!! (2020年4月12日 23時) (レス) id: 9c40eb9251 (このIDを非表示/違反報告)
つきこ(プロフ) - 零華さん» 遂に手出しましたね…!相手が未成年なのでかなりやばいですね笑 もっといちゃつかせたいです… (2020年4月12日 17時) (レス) id: 1520dc3908 (このIDを非表示/違反報告)
つきこ(プロフ) - うぐいすのしっぽさん» 楽しんで読んでいただき何よりです笑 ありがとうございます(^^) (2020年4月12日 17時) (レス) id: 1520dc3908 (このIDを非表示/違反報告)
零華 - お!ついにさねみん手を出した!!サツの出番かな?(いいぞもっとやれ!!) (2020年4月12日 15時) (レス) id: f56491ae0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つきこ | 作成日時:2020年4月7日 13時