肆拾伍 ページ44
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「……お、お先に失礼しました…」
カラ、と障子を引くと現れた、一人で座っている冨岡さん。
冷えるだろうに、構わず先に私をお風呂に勧めてくださった。
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冨岡「…っ……ああ、」
「お着替えまで本当にすみません、有り難いです」
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まあもちろん、隊服は上から下までずぶ濡れだったため、冨岡さんの普段着を貸してもらった。
男物だし凄くでかい。
帯を胸の下に留めてなんとか形作っているけれど、裾はちょっと床に擦ってるね。
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「…さ、冨岡さんも早くお風呂に入ってください。
私が言えることではないですけど、風邪ひいたら困るので」
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冨岡「………ああ、お前も休め…」
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____ぐぅ。
「えっ」
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……なに今の可愛い音。
冨岡「……すまん、気にするな」
冨岡さんのお腹の音か。
もし任務続きだったなら、食事を取れないこともよくある。
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「………冨岡さんが良ければ、私がお食事をお作りしましょうか?」
冨岡「……気を遣わなくていい、」
「私は大丈夫ですよ、台所と食材さえ使っても良いなら。というか、お邪魔している身なんですから、それぐらいさせてください!」
そんな豪華なものは作れませんが。
冨岡さんのお役に立てるなら料理ぐらい何てことない。
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冨岡「…じゃあ、自由に使ってくれ」
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何作ろう。
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____ぱく、
____ぱく、ぱく。
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「……お、お口に合いますでしょうか……?」
冨岡「…ああ、美味い。」
ほっ。
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あんまり無言だから、ましなのかどうか本当に怖い。
米を炊いて汁物を入れて魚を焼いただけで申し訳無いけど、お口には合ったようで良かった。
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「…冨岡さん、意外と食材は揃えていらっしゃるんですね。そういうの、あまり執着がないと思っていたんですけれど」
冨岡「……特に興味があるわけではない。
いつも錆兎から生活用品を貰うだけだ」
ああ、そういうことか。
「錆兎さんはしっかりされてますもんね、」
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ゆう - もうほんと、プロかってくらいの文才ですね半分分けろ(?) (2020年10月8日 22時) (レス) id: 7af342ea3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊咲 | 作成日時:2020年5月9日 15時