拾捌 ページ18
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私の目の前には、きらきらと輝く簪が沢山並んでいる。
しのぶちゃんはこの藤の花だろうなぁ、
蜜璃さんにはやっぱり桜が似合いそうかな、
あまね様は気品のある蘭とか……
うきうきして見ていると、ふいに静かだった冨岡さんが簪に手を伸ばした。
冨岡「……これだろうか」
冨岡さんが手に取ったのは、小さくて可愛らしい桃色の花の装飾があしらわれたもの。
先ほど聞いた、"ラインストーン"が散りばめられている。
「どれですか?蜜璃さん?
あっでも伊黒さんに怒られちゃいますよ〜〜」
冨岡さんにも、こんなに可愛い飾りを贈りたいと思える相手がいたのか。
きっと綺麗で完璧な方なんだろうなぁ、
冨岡「………ふ、よく似合う」
私の頭にその簪をかざした冨岡さんは、確かにそう呟いた。
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………え、?
…笑った……?
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『……ふ、』って、
端正で美しいその顔が、深い青色の瞳が、
まるで愛しくて仕方がない、宝物を見るように微笑んだ。
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…待ってまってえげつない、
冨岡さん、その顔はダメだって……。
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……というか、それは誰を想っている表情ですか。
「………いや、これは、可愛らしいですけど、私にかざしても…………」
冨岡「お前に選んでいるのだから、お前に合わせるのは当たり前だろう」
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…………はい、?
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「っ待ってください、飾りは好きですけど、別に欲しいわけでは………
…さっき、錆兎さんに組紐も貰ってしまいましたし、」
そうだ、ついさっき、上司である錆兎さんに綺麗すぎる組紐を買って頂いただけでも申し訳無いのに。
一気に水柱のお二方から物を頂戴するなんて、そんな贅沢があってなるものか。
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色々と考えて伝えようとしたのに、冨岡さんはまるで聞いていないようだ。
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____ぐいっ
腕を引かれて、私の身体と冨岡さんとの距離はほぼ無くなった。
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ゆう - もうほんと、プロかってくらいの文才ですね半分分けろ(?) (2020年10月8日 22時) (レス) id: 7af342ea3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊咲 | 作成日時:2020年5月9日 15時