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ー、、転校生の、ほらあの子、



ー、、聞いた聞いた、親の離婚らしいね



ー、、みたいだよね、母親、男作って逃げたって



ー、、どっちにしろキッツ笑








全部、あながち間違いじゃないようで違うよ、、





あの街に越して来て転校もして
電車の乗り継ぎにも雪にも慣れた1週間後には
私の噂はそこら中に蔓延してしまっていた。





収拾することも弁明することも
他所から来た私にはする権限すらないのは
だいぶ昔に覚えたこと。





着慣れないごわつく制服の着心地の悪さは
好奇な視線と耳障りな標準語での陰口も相まって
何倍にも膨れ上がる。






帰りたい。





でも、5時限目、数Bだし受けなきゃ。





それでも、叶うなら、、





海が見たい。








咄嗟に騒がしい噂から逃げる様に
図書館の1番奥の本棚と本棚の角、
絶対的な死角で近場の本棚に挿してあった
この辺の地図を広げて路線図を調べ当てる。





、、あれ、まず、学校がどの辺り?





この辺かな、や、でも、こんな建物ないし、、





神奈川って思ってたより広いなぁ、、








「ん、お、何してんの?」



「っ!」








後ろから心地の良い少し掠れた声に
耳を掠め取られて反射的に仰け反ってしまった。








「んははっ、有馬、見っけ笑」



「、、びっくり、したぁ、、」



「ふっは、有馬って何かと警戒しすぎだよな笑」



「ちがっ、今のは、、かわ、み、くんが、、」



「か、わ、か、み、川上な!
いい加減覚えろって、席、隣なんだし笑」








くしゃくしゃと顔に皺を寄せて笑うその人は
同じクラスで隣の席の川上くんだった。





初日に杏仁豆腐って言われてから
あんまり得意ではないのだけど





喉奥で笑う声が心地いい背の高い
少しだけ強引な男の子で
あんな噂が独り歩きしても
何かと突っかかってくる変な人。








「ぶっ! 何、地図見てんの笑」








無遠慮に笑う川上くんは
きっと精神年齢が中学で止まっている。





でも、彼といても不思議と嫌な気にはならなくて
それがたまに、とてもむず痒くて
なぜか途端に居心地が悪くなる。








「何、有馬、どっか行きたいの?」



「え、や、特には、、」



「嘘つけ、じゃあ地図なんか見ないだろ笑」








川上くんは知らない。





昔、私がこの街にいたことも、何もかも。





そう、こんなの、彼は知らなくて良い話。






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作者名:蒲公英 | 作成日時:2018年1月26日 4時

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