スキの定義２《赤》

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本社へ来て一ヶ月が経とうとしていた


大阪の会社と比べて圧倒的に仕事量が多い
ついていくのがやっとだったここでの仕事も段々と慣れつつあった


今日も少しの残業を終え、そそくさと会社を後にする


多少はマシになったにしろ人見知りは今でも健在していて、
話したりお昼を共にしたりする同僚は未だに出来ていない


それでも平気なのはすぐ会える距離にあの四人がいるからだろう


五人で集まった日を境に個人個人で会うことも多くなった


やっぱり一番会っているのは流星で
高校の時のようにたわいもない話をしてまったりとした時間を過ごす


あの日以来、流星が大毅の話をすることはなかったし聞くこともしていない


私だけ知らないのはなんだか悲しい気もするけど
知らない方がいいこともあるんだと思うようにしている


二日に一回ほどのペースで淳太くんと連絡を取っている時も
やっぱり私は淳太くんのことが好きだと感じる


流星には抱かなかった感情、大毅の時とも違う


苦しさも切なさもない、ただ好きという感情だけが存在する


こんな幸せは二度と来ないんじゃないかと思うくらい
私は淳太くんと過ごしてきた日々に満足していた


家に着き、溜まっていた洗濯物を干していると
テーブルに置いていたスマホが着信を知らせる



｢もしもし？｣

｢もう仕事終わった？｣

｢うん、さっき帰ってきたとこ｣

｢じゃあ出掛ける準備しといて｣

｢えっ？｣

｢今東京おるから一緒に飯でも行こう｣

｢ほんまに？行きたい！｣

｢ははっ、こんなんで嘘つかへんわ
じゃあ迎えに行くから待っといて｣



そう言って切れた電話


淳太くんに会えると思うと自然と緩まる頬


ほら、私淳太くんのことちゃんと好きやん


もう大毅のことは考えないようにしよう


再びそう思えるようになったのに


動き出した運命は残酷にも止まることを知らなかった





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