33 ページ33
ジョンインside
ワッと歓声が上がってステージを見ると、ギターの絵がプリントされたTシャツを着た人達がステージに現れた。
わ、ギョンス先輩だ！と、Aが横ではしゃぐ。
知ってたのにそんな驚くんだ、変な奴。
｢こんにちは〜！軽音部です〜！
みなさん楽しんでくださいね〜！？｣
やけにハイテンションな長身のドラム担当の奴。
両脇でギターとベースも煽って盛り上げる。
当のギョンスと呼ばれる先輩は、ただ突っ立っているだけだ。
この人、ほんとに歌えんの？
ドラムが叩かれ、ギターの弦が弾かれる。ベースの重低音が心地良く響く。
それに重なる歌声。
さっきまでの俺の考えは間違えだった。
演奏が始まると、そんな疑問なんて吹き飛んだ。
見た目からは想像できないような綺麗な歌声。繊細で、力強い。
すげぇな、この人。
すぐにそう思った。
隣を見ると、Aが瞳をキラキラさせてステージを見つめている。
｢あ！先輩こっち気づいた！｣
そう言って腕をぶんぶんと振るA。
ステージの方に視線を戻すと、やさしい目をしたギョンス先輩がこっちを、Aを見つめていた。
すると一瞬、となりの俺を見る。
先輩の目が、揺れる。
…なんだ。そうなんだ。
A、気づかないの？
こんなに愛おしそうな目でお前のことを見てるのに。
となりにいる俺を見て、あんなに不安そうな顔をしているのに。
なぁ、A。Aもいつか…………
｢俺、部活のところ戻るわ｣
そんな俺の声も、先輩の綺麗な歌声でかき消されてしまう。
まぁいいか。どうせAは、このステージが終わったら、先輩のところにふらっと行くんだろう。
｢先輩すごくかっこよかったです！｣なんて、笑って言うのだろう。
もう一度ステージに目をやる。
いつか、Aのとなりに立つのであろう人の姿を、顔を、声を、
自分の脳裏に焼き付けて、俺は、Aのとなりから離れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 660人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きゃっち(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます！！楽しんで頂けるよう頑張ります！！(*^^*) (2016年2月5日 2時) (
レス) id: be2a84178a (このIDを非表示/違反報告)
あい - すごく面白いです！これからも更新頑張ってください！ (2016年2月4日 22時) (レス) id: a29c81a51e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きゃっち | 作成日時：2016年1月31日 23時
