└元彼のお話。 ページ7
.
「じゃあさ、元彼とかいたことないの?」
突拍子もないそんな言葉に、荷物を整理していた手が止まる。
元彼かぁ。
たった1人、その称号が当てはまる人物の顔が私の脳裏に浮かんではぱちりと消えた。
「紗夜ちゃん?」
「……ん、ごめんごめん。1人だけいたよ、大学生の時」
「へー。もっといると思ってた」
「どういう意味それ〜」
そりゃ私の顔の良さならモテましたけど?両手じゃ足りないくらいに告白とかされましたけどね?
だからといって付き合うかどうかは別だし。
私の顔だけを見て告白されても、それにホイホイ付き合う人間じゃないのだ。
「どんな人なん?」
「知りたいのー?」
「うん」
「私たちと同じ職業だよ」
そう返せば、由伸くんは豆鉄砲を食らったように目を丸々とさせていた。
この狭いプロ野球界に元彼がいるとなれば、まぁ驚くのも無理はない。
「まじで?」
「由伸くんも対戦したことあるよ」
秘密にしていたわけじゃなくて、ただ誰にも言う機会がなかっただけだけど。
由伸くんはさっきの態度はどこへやら、といわんばかりに身を乗り出してくる。
「なにそれ誰!?」
「えっとね――」
「おはようございまーす」
口を開いた私を遮るように、ロッカールームの扉が開いて、何人かの選手がぞろぞろと入ってきた。
由伸くんは早く聞きたそうにうずうずとしているけれど、流石に大人数の前で昔の恋愛話をする気にはなれなくて、人差し指を由伸くんの口の前にあてた。
「今度教えてあげる」
「えー」
「次当たった時ね」
「じゃあパの人なんだ」
「まあね」
「絶対ですからね」
「はいはい」
何度か念押ししてくる由伸くんに、苦笑いしながらそう返した。
そういえば、圭太くんもよく私に同じように言うっけ。
出会って1年と少ししか経ってないけど、どうやら口調が似てしまう程には一緒にいるらしい。
脳裏に浮かぶのは渦中の元彼ではなくて、大事な友達の圭太くんのことだった。
199人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イナミ(プロフ) - Belleさん» コメントありがとうございます〜!♡同級生の佐野くんとも絡ませたいですね…!励みになります♡ (2022年7月25日 22時) (レス) id: 0f6a450733 (このIDを非表示/違反報告)
Belle - 中川圭太くんと佐野皓大くんが好きなので嬉しいです。更新楽しみにしています♡ (2022年7月25日 22時) (レス) id: 92477a7873 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:イナミ | 作成日時:2022年7月10日 10時