└2人で必ず。 ページ5
.
病院についてすぐ、出会った球団職員さんは私を見て驚いたような表情をした。
試合が終わって30分も経っていないから、当然だろう。
圭太くんとの仲は周知のようで、職員さんは何も言わずとも居場所を教えてくれた。
礼を言ってそこへ向かえば、丁度診察が終わったらしく、トレーナーに付き添われていた圭太くんと目が合った。
「なんで、」
「圭太くんが心配だったから、つい」
「……」
「あ、ちゃ、ちゃんと試合は頑張ったよ…！同点で終わっちゃったけど…、」
黙ったまま何も言わない圭太くんに、慌ててそう付け足す。
心配でつい来ちゃったけど、もしかして呆れられたかな。
私よりも幾分も背の高い圭太くんを見上げると、そこには予想外の表情をした圭太くんの姿があった。
「な、なんで笑ってるの！」
「なんもないわ」
「なんかあるから、笑ってるんでしょ！？」
大きな声を出してから、今いる場所を思い出して、すぐに口を噤む。
そんな私を見て、圭太くんはまた小さく笑っていた。
「……怪我は、大丈夫だったの？」
「打撲と裂傷」
圭太くんはぐるぐると包帯巻にされた右手を、見せるように上げる。
見えないその中身を想像して、ひゅっと小さく息が漏れた。
「骨とかには影響ないから、練習とかはできるらしい」
「……開幕には、間に合うの？」
開幕まで既に2週間を切っていた。
影響ないとはいえ、そんな状態で試合に出られるのだろうか。
「絶対間に合わせてみせるから、大丈夫」
「……根性論じゃん」
「それでも、やるしかないやろ」
「でも」
「でもじゃない。2人で活躍して、今年こそ日本一になるんやろ？」
「……あ、」
それは、去年のルーキーシーズンに決めたことだった。
圭太くんは7位、私は8位でのドラフト指名。
プロの世界へ入れば順位は関係ないとはいえ、当時の私たちには大きな差のように感じた。
1位や2位の人たちのような即戦力としては、期待されてないかもしれない。
そんな私たちだけど、絶対に活躍して、日本一の座を手に入れようと約束したのだ。
悔しくも去年は最下位だったけれど、次こそは必ず。
シーズンが終わってすぐ、改めて誓い合ったことは記憶に新しい。
……そうだ、圭太くん本人がこう言ってるのに、私がそれを信じなくてどうする。
「…うん、当たり前じゃん」
「ん。だからそんな酷い顔せんの」
「ひど…っ！？可愛いって言って」
「はいはい。……まぁ、来てくれてありがと」
「いえいえ〜」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 199人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イナミ(プロフ) - Belleさん» コメントありがとうございます〜！♡同級生の佐野くんとも絡ませたいですね…！励みになります♡ (2022年7月25日 22時) (
レス) id: 0f6a450733 (このIDを非表示/違反報告)
Belle - 中川圭太くんと佐野皓大くんが好きなので嬉しいです。更新楽しみにしています♡ (2022年7月25日 22時) (レス) id: 92477a7873 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：イナミ | 作成日時：2022年7月10日 10時
