秋、ちょっとだけお別れ。 ページ14
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今シーズンも終盤に近づいてきた秋の朝。
監督から伝えられたのは私の登録抹消だった。
去年入団してすぐに1軍で使ってもらって、幸運なことにずっと抹消された事がなかったから、私にとっては初めての経験だった。
最近は1安打あるかないかくらいだったから、そんな予感はしていたけれど、いざ伝えられると。
少し、胸の内が重たくなる。
最短でも1軍に戻ってくるまで10日はかかる。
少しでも力をつけて、早く呼び戻してもらえるようにしないとなぁ……。
「紗夜」
「あ、圭太くん。聞いた？抹消されちゃった〜」
舞洲へ持っていく必要最低限の荷物を整理していれば、少し神妙な面持ちをした圭太くんがそこにいた。
いつもより来る時間早いけど、どうしたんだろう。
「紗夜も抹消されるんやな」
「そりゃあ今の成績なら仕方ないよねえ……」
「早くて10日後やっけ」
「うん。私がいないからって寂しがっちゃダメだからね？」
「紗夜こそ。俺おらんくてもやってけるん？」
「大丈夫だもん。……多分」
多分かよ、と笑う圭太くんが当分見られないのかと思うと、ただでさえ沈んだ気持ちが更に奥底に沈んでいくようで。
1軍で試合できないのも悲しい。私の実力不足なのも悲しい。
でも、なによりずっと一緒にいた圭太くんに会えないのだなと思うと、悲しくなってしまう。
「……紗夜」
「ん…って、わ、」
いつもより少し柔らかい圭太くんの声がして、顔を上げる。
くしゃりと頭を撫でられたかと思うと、よしよしというように優しい手つきに変わるものだから、ちょっぴり泣きそうになった。
「すぐ帰ってくるんやろ」
「……うん」
「紗夜なら大丈夫」
「圭太くんこそ、抹消されないでよね」
「縁起でもないこと言わんの」
「私が帰ってきて圭太くんいないとか嫌だよ」
「どっかの誰かさんが悲しむし、絶対待ってるから」
「ん……やくそく、して」
してくれたら頑張れる気がするからと小指を差し出せば、
圭太くんの大きくて細い指と、私のそれが絡み合う。
ずっと一緒にいたのに、初めて圭太くんに触れた気がする。
あったかいなあ。
終わり
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イナミ(プロフ) - Belleさん» コメントありがとうございます〜！♡同級生の佐野くんとも絡ませたいですね…！励みになります♡ (2022年7月25日 22時) (
レス) id: 0f6a450733 (このIDを非表示/違反報告)
Belle - 中川圭太くんと佐野皓大くんが好きなので嬉しいです。更新楽しみにしています♡ (2022年7月25日 22時) (レス) id: 92477a7873 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イナミ | 作成日時：2022年7月10日 10時
