16. ＊＊ ページ16
「いちくんっっ！！！」
フライパンを投げ捨てて、
慌てて抱き起したその身体に感じる、通常より高い熱。
薄く目を開けた一郎は、「たー....だぃま...」と、ふにゃりと目尻を下げた。
「ちょっと.....すごい熱...」
「えへへ.....」
相変わらず、ほにゃりと笑う一郎。
自力で起こせないその体は二郎にもたれかかったまま、
それでもその笑顔はいつもと変わらず、優しくて柔らかくて。
それが余計に、二郎の胸を、締め付けて。
どうして....
『どうしてこんなになるまで我慢するの』
と聞きかけて、二郎はそれ以上の言葉を飲み込んだ。
どうして、なんて、そんなの。
そんなの知ってる。
ずっと、ずっと前から、知ってる。
「.....とりあえず、布団、行くよ」
「え...しゃわぁ...」
「ダメ」
「......じろのいぢわる...」
「なんとでもおっしゃい」
『さぶの次にバタバタしてる』と言われる二郎も。
『いちさんにはめっぽう弱い』と、四郎にジト目を向けられる二郎も。
こういうときの冷静さは、兄弟イチ。
そしてそう在ろうと、二郎も思って、いるのだけれど。
「そうじ...してたの？」
ぐったり座り込む一郎を背中に黙々と布団を敷き、
それからタンスを開け一郎のスウェットを取り出し、汗に濡れた服を、着替えさせ始める二郎。
「.....いいのに...じろ、いそがしいのに...」
「仕事が早く終わったの。たまにはいいでしょ？こんな休みも」
「.....じゃ...やすまなきゃ...」
「もう休んだから」
「.....うそつき」
体調が悪いときほど、兄弟を気遣いなんでもなさそうにする一郎の扱いは、心得てる。
普段一郎にあっまあまの二郎が、唯一強くでるときは。
一郎を心から、心の底から、心配してるとき。
そして。
「.....じろ...」
「ん？」
「ごめ.....ね...」
こうやって、それでも一郎がほんの少しだけでも弱さを見せられるのはきっと。
自分の前で、だけだとも。
思えるくらいに一郎を、想ってる自信は、あるから。
俺一人でよかった...
二郎に抱きかかえられるように、布団に寝かされた一郎。
いつもの何倍も、何十倍も儚く見えるその姿はきっと、弟たちには見せたくない姿だと、思うから。
「冷たいタオル、用意してくる」
そっと声をかけ、立ち上がる二郎。
その脳裏には忘れられないあの日の記憶が、昨日のことのように蘇っていた。
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マナ - 作者さんに質問です。あなたは茨城県北茨城市磯原町の出身、または住んでいますか？ (2021年11月27日 20時) (
レス) @page1 id: 8df98fa480 (このIDを非表示/違反報告)
檸檬(プロフ) - こんにちは。その後が気になっています。また、お時間あるときに続きをお願いします。 (2021年7月17日 17時) (レス) id: d5f4de7f1a (このIDを非表示/違反報告)
あっちゃん(プロフ) - ううっっ！ いちくーん。以上心の叫びでした。きっとこの先に幸せな未来が来るんだよね？ね？ね？心静かに待ちます。 (2021年1月14日 15時) (レス) id: 178db8b66c (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - そか、マイガールだから、舞賀家か〜....なるほどぉ. (2020年8月13日 18時) (レス) id: 84fdbed2f6 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - あっちゃんさん» 続)「うちのいっちゃん」なあの写真を想像しながら書いてるよ。なかなか筆が進まないことも多いけど、読んでくれたら嬉しいです。本当にありがとう！！ (2020年8月7日 14時) (レス) id: 075ae85cbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mio
| 作成日時：2020年3月12日 0時
