30. 哀しい哀しい、真実。 ページ30
「警察官からあるいは...何か聞かれるかも、しれません。
どなたかとお呼びしたのは...物理的には、その為です」
あの日。
差し出されたA4サイズの、封筒。
「車と接触した際
道路脇に飛ばされていた大野さんの鞄の側に..落ちていたそうです」
きれいな水色をしたその封筒は
所々黒く擦れ、角の辺りが破れていて。
事故に合った
その事実をまざまざと見せつけているようなその姿に
胸の奥が、音を立てて軋んだ。
でも。
それよりももっと。
もっともっと。
心が揺れて
大きな波が立って
頭の奥が、しびれたみたいに動かなくなったのは
その封筒の、中に入っていた、もの。
なぜそこにいたのか
どこへ向かっていたのか
何をしようとしていたのか
その全てが明らかになるその内容は、
俺を、櫻井さんを動揺させるには、
充分すぎるくらい、充分で。
努めて冷静に
冷静に語りかけてくれている先生の言葉さえ
うまく頭に入って来なかったことを、覚えてる。
「大野さんが、“何を”思っていらっしゃったのか。
....それはご本人にしか、分かりません。ですが...」
どうしてとか
なんでとか
よく考えれば分かるのにとか
そういうことじゃ、なくて。
この胸に湧き上がるのは、
“そういうこと”じゃ、なくて。
波となり押し寄せたのは、
俺の心を、あっという間に支配していったのは、
圧倒的な虚無感と、喪失感。
「....ですがどうか、大野さんを...信じてあげてください」
先生の言葉も
そんな『当たり前のこと』さえ
押し流してしまうほどの
その心のうねりは、あの日。
俺からきっと。
想う心も、寄り添うキモチもきっと
奪い去って、しまっていた。
封筒の中に、入っていたもの。
それは銀行の封筒に入ったお札の束と
ひどく立派な、パンフレット。
『聴力再生術事前登録会』という見出しと
『登録料100万円』という文字が躍る
そこに書かれた長い長い文章を俺は
理解することが、出来なかったけれど。
理解なんて。
出来るはず、なかったんだ。
そのすべては。
大野さんが、
心から願ったであろう、そのすべては。
この世界のどこにも。
存在して、いなかったんだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2253人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mio(プロフ) - みーこさん» みーこさん。お返事遅くなり申し訳ありませんっっ！！そしてそして、みーこさんにそこまで思って頂けるここのさとしくんは幸せです（泣）。なかなかに辛い設定のさとしくんですが、みんなで、しょうくんと二人で幸せになってもらえるように、頑張って書いて行きたいです (2018年5月7日 22時) (
レス) id: 075ae85cbe (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - 詐欺って、詐欺って…(涙) 本当に酷い！o(T□T)o …でも、居るんですよね、世の中には、こういう最低なウソ付く輩が。沢山。 (2018年4月20日 22時) (レス) id: 84fdbed2f6 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - やっぱり、智の汚名返上して欲しい。真実を明るみに出して、きちんとレコーダーもどっかかしら出てきて欲しい。m(。≧Д≦。)m この二人を見てると、それが切なすぎる。( ノД` 気になってしまう。いくら死んでしまった人であっても、加害者で有ることに変わりない。 (2018年4月20日 13時) (レス) id: 84fdbed2f6 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - 会長さん» コメントありがとうですぅ//嬉しい。あの頃の2人、迷って悩んでそれでも、その時なりの答えを見つけて行く2人を、頑張って書いていこうと思っています。ご期待に添えるよう...頑張る気合はある（笑）。なかなか力量が伴いませんが、よろしくお願いします^_^ (2018年4月10日 18時) (レス) id: 075ae85cbe (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - 沙菜さん» 続）沙菜さんにそんな風に読んで頂けて感動してます。完璧じゃないから、なおさらお互いを想うし、完璧じゃないから、空回りながらも深くなる想いもあるだろうし、うん、うまく言えなくてごめんなさいっっ//次パートは光が見えるよう書いていきたいと思います。 (2018年4月10日 18時) (レス) id: 075ae85cbe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mio
| 作成日時：2017年11月5日 0時
