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「わかった。別に準備急がなくていいから」
『ありがとう』
入れ違いでエレベーターに乗り込む海斗と、それを見送る私。
ドアが閉まった瞬間、急いで角部屋の自分の家まで行って鍵を開けた。
『ただいま！』
「おかえり。今日海斗くんとデートだよね？あなた楽しみにしてたでしょ。なのにこんな朝帰りなんて……」
家に入ると、お母さんはコーヒーを飲みながらスコーンを食べていた。
『ゼミの飲み会盛り上がっちゃってなかなか帰れなくて。今そこで海斗に会って、今日は私が迎えに行くことになったから、急いで準備して出かけるね』
「そう、じゃあ海斗くんの家に行く時これも持って行って？」
そう言って、ラッピングされた箱をチラつかせる。
受け取ると、甘くて香ばしい匂いがした。
『これ何？』
「このスコーンと苺ジャム、昨日作ったからお裾分け」
『わかった、渡しておくね』
海斗と私の親は、両親同士で仲が良くて、親たちだけでよく遠出ような間柄。
よくこうして私のお母さんが作った焼き菓子だったり、海斗のお母さんが作ってくれる煮込みハンバーグをお裾分けし合っている。
昔から今もずっと、お母さんも"可愛くてかっこいい海斗くんによろしくね"なんて、海斗への溺愛っぷりも凄い。
シャワーを浴びたり諸々準備を急いで、1時間。
本来の待ち合わせ時間には少し遅れてしまったけど、海斗の家の前でインターホンを押すと、笑顔で出てきてくれた。
『お待たせしてごめんね』
「気にしないで。あれ？さっきと服違うじゃん」
普段は鈍感なくせに、こういうところだけは人一倍敏感な海斗。
『気分が変わったの！それより、これ』
お母さんからのお届け物を手渡すと、不思議そうな顔をしていた海斗がパッと明るい笑顔になった。
「お、もしかしてAママの手作りお菓子？」
『そう。スコーンと苺ジャムだって』
「まじ？ありがとう。お母さん喜ぶわ」
お母さんが私に頼んでくれたおかけで、自然に話をそらせた。
海斗が"お母さーん、お菓子いただいたー！"と叫んでいる姿は昔と変わらず。
変わったのは、ママからお母さん呼びになったことくらいかな。
家の奥から扉を開けて、海斗のお母さんがわざわざ出てきてくれた。
「あら、Aちゃん今日も可愛い！いつもありがとうね」
『ふふ、こちらこそいつもありがとうございます』
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作者名：愛生
| 作成日時：2023年12月4日 1時
