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『中村って、好きな人いるの？』
「は？」
『恋したことあるのかなって』
「したことはあるけど、なんで？」
いつも威勢のいい中村が、今は何故か静か。
『恋愛感情の好きって、どういうの？』
「それ聞いてどうすんの」
『どうもしないけど、どんな感じなのかなって』
「恋したことないの？」
『うん』
「まじ！？」
住宅街に響く声。
『何？急に大声出さないでよ』
「だってお前、俺ら高二だぞ」
『そうだけど、付き合うとか好きとか、そういうのずっとわからなくて』
やっぱり、私まだ初恋もしてないって遅いのかな？
人に対して恋愛感情がない、とか？
……わかんないよ。
「んー、“この人のこと大切にしたい”って思ったりすることねぇの？」
『大切？』
海斗になら、思ったことはあるけど。
でも海斗に対しての感情は、幼馴染としての特別な感情だし。
「あとはそうだなー」
何か考えるように空を見上げた後、フッと鼻で笑うと、私を見つめてきた。
「キスしたいな、とか？」
『うわ、変態』
「別に普通だろ」
キスなんて、少女漫画やドラマでしか見たことないし。
何がいいのか、よくわからない。
なんで付き合ったらキスするの？
そもそもキスって、なに？
『……キスとか、わかんないし』
「純粋ちゃんだな」
半笑いでそう言う中村。
『中村、私のことバカにしてるでしょ』
この人、絶対恋したことない私のことバカにしてる。
さっきから鼻で笑ってから私のこと見てくるし。
「いや、逆。いいなって思った」
『え？』
「それぐらい何も知らない方が、男は燃えるっしょ」
まるで、絵に描いたような物凄いドヤ顔。
やっぱりこの人、アニメの見すぎ？
『……は？キモい』
「お前まじで口悪いな。褒めてんのに」
『うるさい。口悪いの中村にだけだし』
「俺にも優しくしてくれたっていいじゃん」
『なんかムカつくんだもん。変態だし』
「いや、だからキスしたいと思うのは好きになったら普通だって。もっと触れたいって思うから」
『……私にも、そう思う日が来るのかな』
「ま、いつか来るでしょ。Aが恋する日」
私の頭に手を置くと、そのままグシャグシャと私の髪が乱れるくらい雑に撫でてきた。
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作者名：愛生
| 作成日時：2023年12月4日 1時
