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嘘、嘘嘘、怖い。
『ね、海斗?大丈夫?』
身体に触れて声をかけても、ハァハァと乱れた息を吐くだけ。
『どうしよう……』
前も同じように看病したことがあるけど、ここまで酷いのは初めてでどうしたらいいかわからない。
『海斗、ねぇ、海斗!』
怖くて涙が出てくる。
体調の悪い人に大声なんて良くないはずなのに、どうしたらいいか分からなくて声をかけるしかない。
とりあえず海斗をベッドの上まで運ぼうと、うつ伏せの状態から腕を上げてみる。
いつの間にか体格が変わっていて、海斗の身体を持ち上げるなんて大変で。
『ね、動けない?よね……』
私、頼りないな。
こんなんじゃ、海斗のお母さんに看病頼まれた意味が無い。
「ん……」
何とかベッドに戻そうと奮闘していると、痛かったのか海斗が声を出した。
『海斗、ごめんね。ベッド戻ろ?』
顔を見ると、薄く目を開けてゆっくり口を開いた。
「……トイレ」
そうか、トイレに行きたかったから起きたんだ。
『私支えるから、もう少し頑張って立てる?』
返事は無いものの、重そうに身体を起こして、しゃがんだ私の背中に体重を預けた。
これなら、何とかなる。
立ち上がって、何とかトイレまで海斗を運んで、出てくるのを待つ。
トイレで倒れたら怖いから、鍵は閉めないでとお願いした。
少しすると海斗は出てきて、私に体重を預けた。
『薬飲んだ?』
首を横に振っている。
ベッドまで何とか運んで、寝転がらせて毛布をかける。
『本当はご飯の後がいいんだろうけど、辛そうだから先に飲んで』
薬を手渡すけど、口元に運んでくれるような素振りは無い。
『海斗、口開けて』
包装シートから2粒薬を出して、力なく開いた口の隙間から薬を入れた。
『これ飲んで』
スポーツドリンクを蓋を開けた状態で手渡して、何とか飲み込んでもらった。
あとはゆっくり寝てもらおう。
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作者名:愛生 | 作成日時:2023年12月4日 1時