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「大丈夫？」
隣の男の子が声をかけてくる。
気持ち悪くてあまり目を開けたくない。
「これ、実は度数高めなんだよね」
『え……？』
顔を顰めたまま何とか目を開けて隣を見ると、とても悪い顔をした男の子たち。
「ちょっと席離れる？気持ち悪いでしょ」
その内の1人が、私の手を引いて歩き出す。
今私の手を掴んでいる男の子が、右にいた子か左にいた子なのかわからない。
だって、もう酔ってよく分からない。
ひとりで立つことも出来ないくらいで、気持ち悪くて、抵抗もできない。
……最悪、最低、私のバカ。
目を開けていられないせいで、もう自分がどこにいるのかも分からない。
どこか、涼しい風が吹いている気がする。
じゃあここは外？ふわふわと歩いている感覚。
車が走る音も聞こえる。
私、どうなっちゃうんだろう。
彼氏に怒られちゃうよ。
呆れて、振られちゃうかな。
あー、気持ち悪い。
男の子が何か話しているけど、もうそんなことより全て吐き出したいし、水が飲みたい。
ふわふわ、くらくら、ぐるぐる。
こんなに酔ったの、初めてかも。
「おい」
ふわふわとした気持ち悪くなってるのに、そんな中でもやたらと判別できる声。
「そいつ、俺が送る」
「は？なんだよ海人。俺たちこれからお楽しみなんだけど」
中村？
そっか、知っている声だから判別できたんだ。
「持ち帰るならあとの2人どっちかにしろよ」
中村の怒った声、久しぶりに聞いたなぁ。
もしかして助けに来てくれたのかな。
「海人があの2人にすればいいだろ？俺はAちゃんがいいんだよ」
「とにかくAはダメ、俺が狙ってたんだから」
「お前全然喋ってなかっただろ。いつの間に呼び捨てで」
「うるせぇよ。A、行くよ」
腕を強く引かれて、少し歩いたところの歩道にあったベンチに私を座らせた。
優しいけど強引なところ、中村らしい。
「これ飲め」
いつどこで調達したのか分からないペットボトルの水を差し出してきた。
蓋を開けてくれて、歪んだ視界を遮断するためにまた目を閉じて水を飲む。
「もういい？」
『うん』
ある程度飲んだところで、ペットボトルを回収して蓋を閉めてくれる。
中村には申し訳ないけど、肩を借りて少し休むことにした。
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作者名：愛生
| 作成日時：2023年12月4日 1時
