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玄関で靴を履き替えて外に出ると、まだ雨が降っていた。
『天気予報のうそつき』
拗ねている私を横目に、宮近くんは傘立てに刺さっていたビニール傘を開いた。
「ん、入って」
雨にあたらないギリギリの屋根がある場所で、傘の半分のスペースを空けたままの宮近くん。
これって、相合傘するってこと？
相合傘なんて、海斗としかしたことないよ。
『私は大丈夫、濡れて帰るから』
「濡れないために教室に残ってたのに？」
海斗や中村と違って、宮近くんはこういう時に確信をついてくる。
『それとこれとは別だもん』
「じゃあ俺の傘貸すから、これで帰りな」
『それは宮近くんが風邪ひいちゃうからダメだよ』
「だったら大人しくここ来て」
言い訳ができない状況になって近づくと、さっきと同じように優しく笑った。
「ん、いい子」
頭をポンポンと撫でられる。
どうしよう、こういう時どうしたらいいの？
『……行こ、もう遅いし帰らなきゃ』
「そうだな」
宮近くん、どうしてこんなに私の頭撫でてくるんだろう？
クセなのかな？誰にでもやっていること？
宮近くんって妹とかいた？
わからないよ。
どう反応していいか、どう処理したらいいか、全部わからない。
「そんな離れたら濡れるよ。こっち来て」
歩き始めて数分、私が離れて歩いているからか、宮近くんの肩が濡れている。
濡れるよ なんて言いながら私の方に傘を差し出してくれているから、私は一切濡れていない。
『ごめんね。私のせいで宮近くん濡れてるよね』
「そう思ってるんだったら、もっと俺の方来て」
『それは……』
「分かった。じゃあAが傘持って」
『え？』
持っていた傘を手渡して、私の方に近づいてくる。
何をするのか分からなくて立ち止まると、宮近くんはすぐ隣まで来て私の腰に手を回した。
『まって、まってまって』
「こうでもしないと、ちゃんと傘に入ってくれないでしょ？」
隣から腰に手を回されているせいで、逃げられない私の右腕には、宮近くんの左腕が触れる。
こんなの近すぎる。
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作者名：愛生
| 作成日時：2023年12月4日 1時
